2014年12月10日更新
都心タワーに暮らして思うこと
第3回:キャピタルマークタワー
<エリアの視点から>
第1回でキャピタルマークタワーの住民層に触れましたが、最終回は都心・湾岸タワーに視野を広げます。「なぜITエンジニアは湾岸に住むんだろう」 これは、ブログ「ITエンジニアだって湾岸ライフ」のサブタイトルですが、IT技術者として腑に落ちるものがあります。私が23区で最初に住んだのが港区内のURタワーで、生活利便性だけでなく、子育てなど将来も総合的に検討のうえ、コスト面、さらに(共有ラウンジ含め)眺望まで考えると、湾岸タワー購入は自然な結論でした。
統計的なデータはないものの、まわりを見る限り理系的な合理性に基づく選択基準が、とくに湾岸エリアのタワーマンションにはありそうです。むしろ文系か理系かという二元論でなく、都心タワーでまったく新たな生活を構築しようというマインドを持つ方が多いのかもしれません。
<行政や業界に対して>
1996年に15万人を切るまで落ち込んだ港区の人口は、この10年で1.4倍になり24万人を超えました。リーマンショック後に外国人富裕層の国外脱出などで減収に転じた特別区民税収入は、ようやく増収基調にあります。港区は財政上の裏付けもあり新たな施策を打ち出していますが、わかりやすいのはニュースでも報じられた「第2子以降の保育料無料化」でしょう。23区初の取り組みとのことで、第1子も園児の場合のみが対象ですが、動きとしては評価できると思います。これまで待機児童の問題をはじめ、急激な変化に行政がなかなか追いつかなかったのが実情なので、都心エリアのあるべき姿を示す施策に期待しています。
行政の関与が不可欠な山手線新駅の話題は、いまのところ「芝浦」「港南」「高輪」など、わかりやすい駅名の議論に陥りがちです。40年ぶりの新駅としてエリア全体の発展につなげたいものです。
大規模マンションの販売では、上下階を同じ間取りにしてコストダウンし、可能な限り在庫を持たない青田売りのスタイルがいまだ主流です。効率的ではあるものの、グローバル化後の日本の製造業の苦悩を見るにつけ、ワンタイムで売って終わり、という時代の終焉は近いでしょう。
私が新築リノベーションしたのは、入居までのモラトリアム期間に、逆に同じ間取りの部屋がほかにないことで、間取り設計上の問題が気なったのがきっかけでした。相談した建築家の方に「これは…21世紀の間取りではないですね」と、言いにくいことを指摘いただき決断しました。「家の時間」を読んでいると最近は新築リノベーションも立ち上がりつつあるようですが、新築を使わないまま壊すのは単純にモッタイナイですね。
リノベーションをするとあらためて実感しますが、最新タワーの可変性は非常に高く、トイレ移設を含む水回りの変更もまったく問題なくできました。一度経験するとお仕着せでは満足できなくなるもので、近隣に越してきた妻の両親が住むマンションも小規模ながら新築リノベーションを入れています。最近は、たとえば住友不動産の「カスタムオーダーメイドマンション」が従来のメニュープランや期間の制約を減らすなど、注目すべき変化はあるものの、一部スケルトンのままでも引き渡し可能にするなど、さらなる自由度があってもよいでしょう。
<コミュニティの連鎖へ>
エリア全体を考えると、大事になるのは地域連携でしょうか。今後のコミュニティの方向性として、湾岸エリアならではの活動を示します。
区内のタワーマンションを中心とする活動に「港区高層集合住宅の防災を考える会」があります。詳細はホームページを確認いただくとして、震災時に1週間発電可能な海上の船舶流通燃料を確保し、さらに水や食料とあわせ供給可能とする試みです。キャピタルマークタワーはもちろん、芝浦・港南の多くのタワーが参加しています。
また、運河および周辺の水辺空間の再生に向け、東京都が推進する「運河ルネサンス」があります。5つのうちひとつが芝浦地区で、多目的桟橋、運河カフェに加え、共催する「芝浦運河まつり」は今年で10周年を迎えました。運河クルーズや、災害時用のゴムボートによる「町内対抗ボートレース」などの企画により、多くの住民で賑わっています。
水辺を交通ルートとして見ると、芝浦(上記桟橋)からお台場、さらに豊洲を結ぶ「アーバンランチ」の運行が、少々お高い(1区間600円)ものの継続されています。
芝浦アイランド内の5棟で構成する「芝浦アイランド自治会」の活動は、都心タワーならではの地域の関わりです。分譲・賃貸を問わず複数のマンションがひとつの自治会を形成するケースは港区初、かつ規模も港区最大で、「サスティナブルなコミュニティ形成」を目指しています。私も、イベントのひとつ「島祭り」には何度か遊びに行き楽しみました。
芝浦アイランド内には「こども園・児童高齢者交流プラザ」があり、第1回で紹介した幼保一体施設に加え、学童クラブの児童、60歳以上の方がお互いに刺激しあう場となっています。こども園の夏まつりでは、高齢者の方が園児たちと楽しそうに盆踊りを踊る姿が見られます。
上に書いた妻の両親も、数十年住んだ札幌のマンションを引き払っての芝浦移住です。コミュニティの構築はこれからですが、世代を問わず新たな生活にチャレンジできる仕組みは用意されていると思います。
本シリーズでも紹介されたRJC48の活動は、地域という空間でなく、マンション管理という共通項により、これまで孤独だった理事長のノウハウをつなぐ画期的な試みと理解しています。いっぽう、第1回で書いた理事会に対するオフ会のような、アンオフィシャルなコミュニティも今後は大事になると想像しています。実際、本連載を執筆されている方を含め、複数のマンション間でお互いを訪問し、ラウンジなどでマンションネタのトークに花を咲かせる経験をすることで、自分の知見も広がりました。大規模物件のなかでも、とくにタワーマンションが一般化したのはごく最近のため、今後はマンション間コミュニティが鍵になると考えています。
芝浦から東京タワーの都心ランドスケープ
【キャピタルマークタワー】
第1回 都心湾岸物件8年目のリアル
第2回 三角タワーのポテンシャル
第3回 都心タワーに暮らして思うこと
- <港区三田>
キャピタルマークタワー 2007年11月竣工。田町駅徒歩8分、三田駅徒歩9分で山手線新駅予定地にも程近い47階建て。当時としては特徴的な免震構造+オール電化で、周囲への圧迫感を避けつつ公開空地を確保した三角形の外観。付帯施設はバーラウンジ、ゲストルーム、住民専用セブンイレブン、ジム、認証保育所など。