2012年07月02日更新
長期優良住宅認定マンションを普及させるヒント
住宅性能評価制度のなかで耐震性をあらわす「耐震等級」は三段階にわかれています。もっとも低い等級が「1」。低いといっても、建築基準法上の耐震基準はもちろんクリアしており、一般的なマンションはほとんどがこれに属します。皆さん”「1」は一番低いんだ”と思われるようですが、”「1」が普通”です。「2」はその1.25倍の強度で、病院や学校など災害時の避難場所としての役割を担うレベルになります。最高等級「3」は「1」の1.5倍。避難活動の拠点となる消防署や警察署などが対象です。長期優良住宅に認定されるには、このうちの等級「2」を取得する必要があります。
学校や病院などを思い浮かべていただくと何となくおわかりいただけると思うのですが、頑丈な建物は「柱や梁が太く」、「大きな開口部(窓)はない」場合が多いはずです。もちろんすべてがそうだというわけではありませんが、えてして柱や梁、大きな窓といった「空間の開放感」と「頑丈なつくり」は対極にあるといってもよいのではないでしょうか。
実際に、現時点で長期優良住宅に認定されたマンションをよくよく観察してみると「免震や制震を採用して、柱や梁が太くなるのを避けることができる構造」であったり、そもそも「揺れに強い建物の形(上から見て長細くない姿)」をしているなど、長期優良住宅の認定を受けることで住空間に凸凹が増えたり、窓を小さくしなければならないといったデメリットの生じにくい条件が揃っていることがわかります。
しかし、そのような条件が整っている現場は決して多いわけではありません。したがって、これから長期優良住宅認定マンションが増えていくには、どんな「(建物の形に連動する意味合いとしての)敷地形状」でも応用でき、さらには「(免震や耐震以外の)一般的な耐震構造で住空間をいじめない工法」の技術進歩が必須といえるのでないかと考えます。
そんな視点で見た場合、現在注目に値すべき1棟が「横浜白楽レジデンス」。低層という条件ではありますが、3棟構成で敷地は南北に細長い形をしています。さらに特筆すべきが、壁式構造を採用していること。柱梁がないのはもちろんのこと、リビング側の開口部はサッシュ高で2,400mmと特大の窓を実現しています。これはTWFS(厚肉壁床)工法といって340mm以上(一部除く)もの分厚い床と壁で構成されているためです。
さらに、売主・設計・施工である大成建設は日本で初めて地下鉄の施工を請け負うなどコンクリート技術の高いことで知られるゼネコンの1社ですが、この物件では「200年コンクリート」ともいわれる36N(ニュートン)/mm2の超長期コンクリートを採用しています(一般的なコンクリートは24N/mm2<65年>、100年コンクリートが30N/mm2)。
長期優良住宅に認定されるには9つの基準をクリアする必要があります。それぞれある程度専門的な知識と理解を要しますが、本来住宅は目に見えないところこそが重要。「横浜白楽レジデンス」のモデルルームは、専門知識のない人でもわかりやすく理解するためのディスプレイが実物大で展示されています。モデルルームでは、内装コーディネイトや日々の暮らしに直結する設備などについ関心が向きがちですが、一度建物の中身はどんなふうになっているのかをご覧になると良いでしょう。こだわりたい「インテリアコーディネートのしやすさ」というものは、じつは構造と密接に関わっているなど、新たな発見がきっとたくさんあるはずです。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)