2013年03月13日更新
マンションの価格変動をいち早く察知する方法
アベノミクスの影響で、昨年末から円安・株高がはっきりと効果としてあらわれています。給与アップを表明する企業も出はじめ、本格的な実需の回復も期待できそうな気配になってきました。一方、不動産に関していえば、REIT関連の銘柄などが市場の流れに沿ったかたちで(牽引しているとの見方もありますが)、堅調に推移しているといえそうですが、さて実物の売買市場に変化はあるのでしょうか。
しばらく、マイホーム購入のタイミングを伺っていた人にとって、不動産の価格動向は大変気になるところです。高止まりしているときや下がりそうなときは、積極的になれないのが心情。とはいえ、前回のミニバブルのときのように急激な跳ね上がりも体験済みで、上向きと気づいたときには”時すでに遅し”といったことにもなりかねません。
では、不動産の価格動向は、どのような指標をウォッチすれば良いのでしょう。日本の不動産は、一物四価といわれています。「実勢価格」「公示地価」「路線価」「固定資産税評価」ですが、このうち実勢価格以外は年に1度発表されるもので、短期的な市場変化をみるには適していません。大手不動産会社やデータ会社が発表する資料も、四半期単位の動向を観測したものが多く、リアルタイムな動きとしてベンチマークするにはやや物足りなさを感じます。逆に、それだけ市場の動きは早いということです。
分譲マンションを検討している方に、ひとつお薦めするとしたら、不動産経済研究所が毎月発表している「マンション市場動向」になるでしょう。毎月どれだけの新築マンションが発売され、その契約率はどうだったか。価格の平均値や前月前年の比較も出ています。ただし、売り出される物件の立地やグレードによって値段は異なりますから、単純に平均値を追うだけなら有意義とはいえないでしょう。ではなぜ、推奨するのか。その理由を述べてみます。多少複雑ですが、これが理解できれば、市場の動きが少し透けて見えてくるかもしれません。
現在、首都圏の新築マンション市場は年間4万戸程度で推移しています。いっときの8万戸供給が落ち着き、適正ボリュームの範囲内と見ることができます。つまり、売れ行きの善し悪しがプライスに波及しやすい規模感だということです。次に、その売れ行きは70パーセントを好不調の境界として見ていくと良い(数値だけをチェックするのではなく、その変化もあわせて点検するように)。注意すべきは発売戸数です。昨今デベロッパーは、集客数に応じて発売戸数を調整する傾向があります。従いまして、たとえ契約率が高くても、前年や前月との比較で発売戸数が大きくダウンしていれば、市況は順調とはいえない可能性もあります。
少し難解に聞こえるかもしれませんが、「戸数と価格に柔軟性を持たせることで、需要の増減に対応する」と捉えましょう。好不調のライン「契約率70%」は大きくぶれることはありません。仮に60%程度まで落ち込めば、相当在庫がかさんでいると見て良いでしょうし、80%の超えるようであれば、絶好調と表現してまず間違いではありません。
ちなみに2013年は、供給余力が高いといわれています。市況が上向けば、デベロッパーとしては、まずはどんどん新発プロジェクトを世に送り出したいはず。よっぽど好調な市場が継続しない限り、すぐには価格に跳ね返りそうにないという点で、今年は買い手にとって悪い環境ではないといえそうです。
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坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)