2013年09月11日更新
2020年東京五輪開催決定! 湾岸マンションは値上がりする?
2013年9月8日、56年ぶりに東京での五輪開催が決定しました。SNS上で知人が、開会式のチケットの話をしているのを見て、なんて気が早いと思うと同時に、こんなにも多くの人が楽しみにしているイベントを間近で体験できることの幸運を思わずにいられませんでした。まだ、7年も先のことですが…。
さて、本題に入りましょう。マンション価格への影響について、です。まずはこんなデータから紹介します。2020年東京五輪が決定した日の湾岸エリアの新築マンション市場動向です。三菱地所レジデンスが分譲中の「ザ・パークハウス晴海タワーズ」。ツインタワーで合計1,744戸の超大型マンションです。三菱地所の広報部によれば、それまで週末のモデルルーム来場数は30組程度だったのが、この日は2倍の60組に増えたといいます。2度目以上の割合が多く、決断を後押しされたかのように「空き住戸」を確認しにきたそうです。
また、新豊洲「スカイズタワー&ガーデン」(総戸数1,110戸:三井不動産レジデンシャル他)でも来場者が1.4倍程度に。「ブリリア有明シティタワー」(同600戸:東京建物・住友不動産)では問い合わせが100件近くにも膨らんだと聞いています。これらは五輪効果以外の何者でもなく、今後の需要の高まりを予感させる兆しといえるでしょう。
すでにテレビや雑誌、新聞などでは不動産価格の値上がり、とくに湾岸立地の分譲マンションに対する予測が取り上げられています。「交通機関の整備が進み、利便性の向上が図れるから」という意見から「10%以上は上がるかも!?」といった大胆なヨミ、一方「五輪熱は冷めやすい」といったものまで。どれも有り得そうで、とはいえ本当かなと思う部分もあり。
そこで、忘れてはならない重要なポイントを挙げてみましょう。3つあります。
まずひとつに、現在の新築マンション市場が、五輪云々を除外しても上昇気運にあるということを理解する必要があります。アベノミクス効果(円安)しかり、金利先高感しかり、そして消費増税前の駆け込みしかり。相続税改正(2015年)の影響もすでにはじまっていると言われています。実際、7月の首都圏マンション市場動向調査(不動産経済研究所調べ)では、販売価格は単価もグロスもふた桁近く値上がりしました。理由は前述したいくつかの要素が絡み合っています。同じ市場でも市況変動の原因は地域によって違います。冷静に分析しなければ、市況を見誤る恐れがあるといえそうです。
次に、とはいえ、今後も超大型のマンションプロジェクトが多数控えていることを念頭に置くべきです。来年発売予定の住友不動産「DEUX TOURS CANAL&SPA (ドゥ・トゥール)」は総戸数1,450戸。これは晴海です。同じく総戸数が1,500戸近くにもなる「勝どき五丁目地区第一種市街地再開発事業」(鹿島建設他)。目新しいところでは大和ハウス工業が有明北地区で3.6haの土地を取得。三井不動産レジデンシャルも「ザ・パークハウス晴海タワーズ」の隣地を購入しています。これらの膨大な供給を吸収するには、相当な需要創出を成し遂げなければなりません。相場トレンドは予測しづらいという他ないでしょう。
最後は震災リスクです。湾岸はタワーマンションが多くを占めることを考えると、地盤と超高層特有の揺れや停電の影響などいくつかのリスクを抱えることになります。それに対して、具体的にどう対処するのか。同じ埋立地でも時期によって液状化の可能性も異なるといわれています。ひとくくりに湾岸エリアと捉えず、物件ごとの価値を見分ける目を養う必要がありそうです。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)