2013年10月30日更新
失敗しないワンルームマンション投資
昨今、新築分譲マンションの取材において、「投資」目的で購入する人の増加を実感します。物件特性で共通しているのは、都心エリアで交通アクセスの良い立地であること。住戸は、専有面積が30㎡に満たないよいうなシングルタイプかもしくは60㎡以下のふたり暮らし用で、向きや階数といった条件はやや劣るものが多いようです。北向きや半地下住戸などがその代表例でしょうか。
マンションの販売価格は、住戸条件の善し悪しで単価が大幅に上下します。ところが賃貸物件は、それほど大きく家賃の単価を違えたりはしません。つまり、取引形態によって市場価格のメリハリの度合いが異なるということ。したがって、条件の劣る住戸は良い住戸に比べ、比較的収益性<売買代金に対する年間賃料の割合>が良くなる傾向にあるのです。
若年層の減少や新築供給の調整がなされないことから、空室問題は深刻化を増している、と言われています。地域によって要因と対策が大きく異なるのではありますが、賃貸用物件に関していえば、簡単に借り手がつく時代ではないといえるでしょう。それでなくとも、勝手に共用部に手を入れたりすることができないなど区分(分譲マンション)は工夫・改善の余地が限られてしまいます。1戸所有であれば、家賃収入はゼロか100。木造アパートに比べリスクが高いといわれるのはそのためです。
稼働率の高い、収益性が安定した物件はどのような特徴があるか。ここにひとつ、ヒントになる事例を取り上げます。都市型賃貸マンションシリーズ「パークハビオ」(三菱地所)は、現在34棟2,909戸を展開。その稼働率は90%以上で、入居者アンケートでは8割が住み続けたいと答えているとのこと。高稼働高評価の要因はどこにあるのでしょうか。
「都心、駅近」といった立地上の優位性は持ち合わせています。が、それはたいていどの収益物件もはずしていないスペック。最大のポイントは、商品企画(建物)です。
下の画像をご覧ください。ベッドが開口部(窓)に対して平行に置けています。おかげで、ソファと薄型テレビをストレスなく対面配置することができます。考えられた(間口の)寸法により、25㎡のワンルームが無駄のない効率的な空間に仕上がっています。インテリア、設備も理想を具現。照明はレール上に4つのライトを標準で。自分で好みの灯りを足し引きすることが可能です。キッチンはシンクとふた口コンロの他に、料理ないしは朝食程度なら食器を置ける十分なスペースを確保。玄関も収納は床から天井まで棚板が並び、床はたたきと廊下一部をタイル張りにしています。
徹底したこだわりは、住戸割にもあらわれています。間口の幅と専有面積(つまり奥行)は、想定顧客の予算範囲を決して超えることのない賃料に収まるよう考慮されています。「シングルタイプなら月額15万円を超えないこと」といったように。
不動産投資をする場合、単価利回りだけで検討することは危険です。机上で高収益が成立しても、実際市場ではグロス(単価×面積)で取引されるため、そもそも予算から外れてしまっては元も子もないのですがそればかりでなく、顧客の嗜好と予算(どちらかといえば年収)を把握し、その上で間取り(と仕様設備)を決めることが重要です。どうでしょう、分譲マンションの購入検討とはまったく異なるプロセスになっているのにお気づきでしょうか。ちなみに「パークハビオ」シリーズは相場賃料の15~20%高い単価で契約できているのだとか。もし、投資用にコンパクトマンションをお考えであれば、まずは想定賃借人の予算レンジを調査することです。次に、ひとり暮らし用の家具を図面に配置し、同じような間取りが周辺にどれくらいあるかを調べてみましょう。
【これから販売予定のコンパクトマンション】
ドレッセ武蔵小山プレヴィ
パークリュクス東麻布mono
ジオ四谷坂町
「パークハビオ恵比寿」モデルルーム<画像:三菱地所>
- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)