2014年10月28日更新
新築中古ともに、マンション相場は踊り場入り!?
不動産経済研究所が毎月発表している「首都圏マンション市場動向」では、9月度供給戸数が3,336戸(前年同月比44.1%ダウン)、初月契約率は71.6%と好不調ライン(70%)をわずかながらクリア。単価は㎡当たり66.5万円(同6.6%ダウン)でした。マンション市場を単月のデータをもってして語ることは困難ですが、もしこの瞬間を一文で表すとするなら「値段が下がっても去年の半分程度しか売り出すことができなかった」となるでしょう。そして、じつはこのフレーズは意外にも現在の市場の実態をあらわしていると思えるのです。どうも予想以上に、かつ急速に、新築マンション市場が冷えてしまったようです。
もちろん、前年同月が消費増税経過措置の駆け込み最終月であったことや契約率が70%ラインをクリアしていることは理解しています。ですが、やはり全体の流れ自体は良くないと判断します。要素(理由)は2点。前月、前々月からの落ち込みの反動の兆しがみられないこと、中古マンション市場でも同様の変化がみられること、からです。
直近3か月のデータを下に並べてみました。供給戸数は7月から順に▲20%▲49%▲44%。価格や単価、契約率の矢印を見れば動向が非常にわかりやすく「価格が上がったから売れ行きが落ちた」ことが理解できます。またそれが、多少戻っても「売れ行きは劇的に改善されていない」ところに反転が容易でないことを予感させます。
7月 | 8月 | 9月 | 直近3か月の前年比 | |
供給戸数 | 4,222戸 | 2,110戸 | 3,336戸 | ↓ ↓ ↓ |
平均価格 | 5,532万円 | 5,684万円 | 4,764万円 | ↑ ↑ ↓ |
販売単価(㎡) | 77.1万円 | 77.5万円 | 66.5万円 | ↑ ↑ ↓ |
初月契約率 | 83.7% | 69.6% | 71.6% | ↓ ↓ ↓ |
ちなみに9月の平均価格(4,765万円)は2014年1月(4,637万円)を除いて、2013年4月(4,728万円)に次ぐ水準。同じく初月契約率(71.6%)の水準は、2013年1月(69.2%)を除いて、2012年11月(70.5%)までさかのぼります。数値が荒れる1月を省けば、アベノミクスのスタート地点まで逆戻りしたとの見方ができなくもありません。ただし、新築マンションは供給されるエリアによって単価や価格等の平均値が大きく変動すること、あくまで売れ行きは個別のプロジェクトによって差がある(当コンテンツで紹介したような都心以外でも駅前再開発などは高値で完売している例も見受けられる)ため、捉える範囲、ピンポイントの立地によって見立てや判断が異なることは留意していただきたいところです。
下のグラフは、東日本不動産流通機構リリースの中古マンション市場動向です。9月の成約単価(折れ線グラフ)が首都圏、東京都、都心3区(千代田・港・中央)すべてで下落していること、在庫数(棒グラフ)がやや底を打ったように見えることがポイントです。
このまま市場が低迷していくのかどうかは、再増税の与える影響が多大なため、現時点では予測困難です。ただ、踊り場入りしていることは確かでしょう。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)