2015年03月05日更新
マンション建替法改正「敷地売却」は活用されるか?
老朽化したマンションの再生は、これまでは*修繕、改修、建て替えの三択だったが、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」改正(2014年12月24日施行)により、新たに「敷地売却」が加わった。実現に要する条件は3つ。一つめは、耐震性を満たしていない証明である「要除却認定」を行政から受けること。二つめは、売却プラン(制度上は「買受計画」という)が明らかになっていること。三つめは、区分所有者・議決権・土地共有持ち分のそれぞれ5分の4の合意があること。(*竣工時に近い状態の機能性を取り戻すことを修繕、それ以上に利用価値を引き上げることを改修として区分けしている。
建て替えで再度マンションを建てる場合、これまでと何が違うのか。従前の手法(主に等価交換方式)では既存物件の売却と新規物件の購入の2つの売買契約を各区分所有者と締結する必要があったが、敷地売却方式では敷地売却組合が統括して執り行う。課題としては設計図書の存在が確認できないマンションが意外にも多いことなどから「要除却認定」を受けるとっかかりの実務から戸惑う場面も少なくなさそうだ。
今回の改正では「容積率の緩和」が関心を集めた。「最大で1.5倍」というものだが、詳細はこれからだそう。東京都の場合、敷地面積1万㎡以上を都が、それ以下は各市区町村が「マンション建替え型総合設計制度」を規定する。
では、現実的に「敷地売却」に取り組む物件はあるか。旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所長の向田慎二氏は、「わかりやすい例えという意味でいえば、利用率が著しく低下したリゾートマンションやオフィスビルとして使える利便性の良い立地などが当てはまりやすいのでは」という。土地と建物を分けることができないマンションは、建物価値の低下に土地の資産性も抑制させてしまうが、今回の法改正で本来の土地の利用価値を取り戻すことができるマンションが(条件は限られるが)増えるかもしれない。
メディア懇談会「マンション建替法改正の内容とポイント」旭化成不動産レジデンス主催
- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)