2009年04月22日更新
「外観で主張」は是か否か
「家の時間」、お気付きのように今月からリニューアルしました!
私のコラムもブログからこの「心地いい場所」に変更となりましたので、
今後共よろしくお願い致します~。
さて第1回は、外観について触れてみたいと思います。
現在アップされている建築家、伊藤寛さんのご自邸にうかがった折、
「建築はできるだけ凸凹のないシンプルな形で、世間に対してでしゃばらない方がいい」というお話を聞きました。
液晶テレビのCMじゃないですが、「リビングは環境です」もとい、
「外観は環境です」と、私もずっと思っていました。
だから、家を建てるためだけに斜面などを真っ平らに削って宅地造成している様を見るとつい、建築って乱暴な行為だなぁと思ってしまうのです。
たとえば斜面に建てるのであれば、できることなら伊藤さんのご自邸のように、斜面に生えた筍みたいに自然の土地の形を壊さず、周囲の風景に馴染んでいる建築が、謙虚で美しいと私は思います。
だから、外観を突飛なデザインにして、オリジナリティとかアイデンティティを主張する、などという考え方には、私は反対です。
そんなところで主張しなくとも、インテリアで思う存分やってください、と、つい生意気な口をききたくなる(笑)。
だって、外観は環境なのですから。
自分だけ満足すればいい、というものではないでしょう。
……と、書いているとだんだんヒートアップしてくるので、今日のところはこのへんで。
若葉が萌え出すこの季節、暑くもなく寒くもない、ちょうどいい温度の風を肌に感じながら、身軽な服装で外をぶらぶらと歩いているだけで、生きててよかった!と思います。
皆さんもどうぞ、初夏にかけての快適な気候をお楽しみくださいね。
(上)伊藤さん自邸の玄関。普通は庇などを出っ張らせるのとは反対に、外壁より引っ込んでいる控えめなデザイン。
(中)同リビング。テラスも、外壁より内側に設けて外からはそれとわからないように。
(下)恒例の、取材が終わっての1枚。右より写真家の淺川敏さん、伊藤さんご夫妻、中島。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。