2010年06月30日更新
ヨーロッパの旅 1 イタリア
久しぶりにヨーロッパを訪れた。
前回行ったのは6年ほど前、オリンピック直前のギリシャへの旅だった。
近頃ニュースでアテネの映像を観る度、オリンピックに湧いたあの街も
財政的に失敗したのね。。。と、諸行無常の感にとらわれる。
さて今回の私の旅は、大好きなイタリアをローマ、バチカン、ナポリ、
アマルフィ、ポンペイと回ってニースへ飛び、
南仏の町やモナコを訪れるという行程だった。
イタリア南部を旅するのは初めてだったが、北部の人たちが
独立したがっているというのが頷けるほど町々が退廃的で、
比べて北イタリアは、隣接する中央ヨーロッパに趣が近い。
いっこうに終る気配のない工事現場や、排気ガスと騒音をまいて走る車、
遅れているのにインフォメーションもない交通機関などに遭遇するにつけ、
「Welcome to Southern Eourope!」という声が聞こえてきそうだ。
だいたい、遺跡すらきちんと修復されず、風化するに任せている点を見ても、
国の政治、自治体の姿勢がわかるというもの。
折しも、私が帰ると入れ違いぐらいにローマのコロッセオの漆喰が
落下する事故があったようだし、ポンペイ遺跡も一部が閉鎖されていたりして、せっかく行ったのにがっかりしたり、それどころか危険だったり。
観光スポットが十分に安心、楽しめるかというと、
残念ながらそうでもないので、これから行く方は事前に情報を収集されたし。
しかしそれでも、私が行った時期はヨーロッパの
バカンスシーズンでもないのに、コロッセオやバチカンをはじめとして
どの観光スポットも世界中の人で大賑わい。
前後の人の会話に耳をそばだて、何語で話しているのか
聞き分けるゲームをして、行列の暇つぶしをしたぐらい。
こうして毎日毎日、世界中から人が訪れ、たとえばコロッセオなど
労せずして(とは言い過ぎ?)日本円で1人1500円あまりの入場料が
ほぼ絶え間なく流れ込み続けるのに、修復費用が足りないというのだから、
不思議な話である。
ろくに修復されないままに放置されているような遺跡ではあるが、
そうは言っても、ポンペイで砂埃混じりの風に吹かれた時は、
やはり感慨深かった。
大きな石を敷き詰めた道には今も馬車のわだちらしい跡が残る。
2000年も前に既に近代的な生活を営んでいた町と人々が
あったことも驚きだし、その営みの片鱗を見、当時の車輪に削られた
道を歩くなど日本ではできない体験で、背筋に鳥肌が立つ畏怖を覚えた。
幼い頃、親と一緒にテレビで『ポンペイ最後の日』という映画を観て、
古代の人を襲った惨事に身震いした記憶があるのだが、
その遠い地に、自分の足で立つ日がこようとは。
人生何が起こるか、予測がつかないものですね。
さて、そんなイタリア南部、住んで生活するのは大変そうだが、
旅人、それも飲み食い大好きな種類の人間にはたまらなく魅力的なのである。
いわずもがな、それが今回の旅先に選んだ理由であるし。
イタリアは南に行くほど美味しいと、誰かが教えてくれたが、
今回身を持ってそれが本当だと知った。
まず、パスタの種類が多い。
いわゆるマカロニ、ショートパスタにもあんなにいろんな大きさと形があり、美味しいなんて、初めて体験した。
たとえば「海の幸のマカロニ」というメニューなら、
分厚く大きい、ぐにゅーっと歯ごたえ十分なマカロニに、
魚介のうまみたっぷりのソースが絶妙にからまって、んもう、
美味しいなんてもんじゃございません!
あの地でなければ食べられないという点では、
讃岐に行かなければ、本物の讃岐うどんは決して食べられないのと
似ているかも。
「アマルフィと比べると、東京で食べるパスタは、
東京で食べる讃岐うどん並に別物だ」と
表現すれば、その差がわかっていただけるだろうか。
(よけいわかりにくい??)
そんなこんなを体験したイタリアを名残惜しく後にして、次はニースへ。
南仏とモナコの旅レポートを、次回に続けますね。
ローマのコロッセオを見上げる。この2週間後に漆喰落下事故があったとは。。。知っていたら悠長に見上げて写真など撮らなかったかも??
(上)ローマの街中でランチ。魚介のアンティパストプレートと白ワインで昼間から乾杯! 休暇の醍醐味ですね。(中)アマルフィ名産のレモンはグレープフルーツ並に大きい。アマルフィ海岸の斜面には、このレモン畑が連なる。レモンのリキュール、レモンチェッロも美味。
(下)アマルフィの波打ち際のレストランで。アマルフィは10世紀前後に栄えた海洋国家だった。岩肌に張り付くようにつくられた古い町、建物が面白い。
ポンペイの共同水道で。紀元前、日本でいえば弥生時代から、このような水道があったことは驚きである。噴水まであったそう。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。