2010年09月29日更新
日本のリゾートの変貌
長引く不況の影響か、経済、社会構造とライフスタイルの変化からか、
あるいはそのどちらも理由になっているのだろう。
日本のリゾート地のすたれ具合には、かなしいものがある。
先日山中湖周辺に行ったのだが、この辺りにも
私が学生だった頃の賑わいは、もうない。
では四半世紀前までは、なぜ栄えていたのか。
テニスをする人がもっといたから?
そう、かくいう私もランニングを始めてから、
道具や仲間や予約が要るテニスをやめてしまった。
しかし事はテニス人口だけの問題ではないだろう。
スキー場だってすたれて久しい。
スキーに関してもまた、私は、四半世紀前まではやっていましたが。。。
日本の地方の観光地がすたれてきた大きな要因は、
想像に難くない通り、海外が身近になったからだろう。
今や信じられない価格で、海外旅行に行けるのだ。
それも、早く着く。
日本の観光地はたどり着くまで、時間のかかること!!!
たとえば山中湖なら、都内から一番便利なのは高速バスである。
しかし、渋滞に巻き込まれることは珍しくないので、
遅れてはならない場合は電車を乗り継いで行くことになる。
私の場合、家を出てから富士吉田駅まで、なんと3時間半!
それから宿まではさらに、送迎バスで30分だ。
4時間あったら、ソウルや上海、台北に着いてしまうではないか。
ちょっと渋滞したら、香港にだって着く時間だ。
さらに、現地で泊まるホテルのグレード、
異国ならでは味わえるエキゾチックな時間と料理と、
そこで支払う対価を考えても、どうも日本のリゾート地は分が悪い。
それでも伊豆の熱海などは、海岸沿いの古いホテル群地区を再開発して、
近年人気を取り戻しつつあるようだが、山中湖周辺は昔のまま。
宿泊施設を建て直すのは莫大な経費がかかるから、
集客を図れない地域はますますすたれていく。。。
という構図になってしまうのだろう。
ちょっと視点を変えて、別荘が多い都道府県はどこか、調べてみた。
近年の政府の調査を参考にすると、多い順に、長野、山梨、静岡、
和歌山、栃木、滋賀、千葉県ということだった。
東京や大阪に近く、自然が豊かで気候温暖という地域が上位を占めている。
確かに上位3県などは、清冽な水や果物が豊かでお酒も美味しい、
住むのも悪くなさそうだな。。。などと、個人的にも好もしく思う。
熟年期以降、もし住む場所を選べるなら、どこに決めるのかは悩ましい。
都市にするか、田舎にするか、それが問題だ。
都心の便利さをとるか、田舎の豊かさをとるか。
地方に出張や旅行に出る度に、考えることである。
山中湖畔から望む富士山。今年は暑かったため、山頂付近にも雪が見られない。雪を冠っていないと、何山かすぐにはわからない??
ランニング中に前を通りがかった、新しいカフェやレストラン。古いままの施設があるいっぽうで、やはり新しい建物もできている。富士五湖が昔の賑わいを取り戻す日は来るか?
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。