2010年11月24日更新
工務店さんの感謝祭
秋深まる11月上旬の週末。
エコ住宅を建てる中堅ビルダー、四季工房
の顧客向け感謝祭が行われた。
私は今年も招待状をいただいたので、感謝祭の会場
福島県平田村「四季工房 ゆいの郷」を訪れた。
四季工房のユニークな点は、これまで同社で家を建てた住まい手の皆さんを「OB」と呼んで長いお付き合いを続けていること。
年に一度のこの感謝祭も、OBの皆さんへのサービス還元を
主な目的にしている。
イベントでは、四季工房で建てたエコ住宅を
住まい手自らがメンテナンスできるようになるための
レクチャーを受けられるのが面白い。
たとえば、同社の家はほとんど全ての木部が無垢材だが、
外部テラスの塗り直しや、無垢板フローリングのキズの手直しなどを指導、
体験できるようなコーナーが設けられているのだ。
私も障子の張替えに挑戦。
建具屋さんや社員の方に教えてもらいながらなので、
けっこう上手にできたが、考えてみたら私の家には障子がないし、
床だって無垢じゃなくて合板フローリングである。。。
四季工房がつくるような家を訪れる度に思うことだが、
こういう家に住んで、大切に自分でメンテナンスして、
小さな庭では少し、花や野菜なんかも育てる生活が
本来の「暮らし」というものなんじゃないか、と。
鉄筋コンクリートの四角い集合住宅の
四角い間取りの四角い部屋に住むのは、
ある意味無駄が少なくていい面もあるが、
それとこれとでは、暮らしの質のようなものが
全然違っているんじゃないか、と。
感謝祭に訪れていたOBの皆さんは熱心に
メンテナンスのレクチャーを受け、体験し、
木工教室では親子で金槌と釘を手に奮闘していた。
そうした何百人というOBの皆さんの住まいはきっと、
年を経るごとに木部がいい色に変わって美しい艶を帯び、
味わいを増していくのだろう。
今はまだ、都心の便利な暮らしに愛着を覚えている身だが、
この感謝祭を訪れるといつも思う。
いつかこんな暮らしをしてみたいなぁ、と。
今年は暑い夏から急に冷え込んだ秋を迎えたせいか、
ゆいの郷はことのほか紅葉が燃えるように美しかった。
感謝祭の一日が終わりに近付き、客足も去っていく。
そんなことを考えながら、ぴんと澄んだ夜気の中、私も会場を後にした。
四季工房ゆいの郷のセンターハウスとして使っている古民家は、同社の野崎進社長の生家をリフォームしたもの
社員の方に教えてもらいながら、障子の張替えを体験。
家の材料に使うために伐って残った根元の部分を丸太椅子として格安で販売。欲しかったが、新幹線では持って帰れない。。。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。