2011年04月20日更新
大震災の、前と後
東日本の巨大地震とその余波により被災された
全ての皆さまに、お見舞い申し上げます。
なお困難な避難生活を送る皆さまの環境が
少しずつでもよくなりますよう、
ゆっくりでも希望が戻ってきますよう、
そして命を落とされた犠牲者の方々のご冥福を
深くお祈り申し上げます。
あの巨大地震から、1ヶ月以上が経ってしまった。
これまでに何が起きたかは、既に報道されているので
ここで書くまでもないだろう。
今も心配なのは、余震と福島第一原発のゆくえだ。
余震がまだ毎日のように起こる度に、東京にいる私でさえ
恐怖と不安を感じるのだから、震源に近い方々はいかほどかと
想像に難くない。
余震の揺れそのものも怖いが、その余震でまた原発の
復旧に支障が生じるのではないかと、何重にも不穏な気持ちになる。
3・11の前と後では、日本は大きく変わってしまったのだと感じる。
これは東京以北の人の感覚で、もしかすると、もっと西、南の方々は
違うふうに感じるかもしれないが、今の自分はそう思う。
福島第一原発から放射性物質が漏洩し、
それが今も続き、収束のゆくえが見えないという現実に、
国際社会の日本への信用は失墜してしまった。
言うまでもないことだが、現場で復旧に向けて
実際に作業をしておられる、東京電力や関連会社の
数百人の方々には誠に頭が下がる。
作業をしてくださっている方々のためにも、
そしてもちろん、避難されている地元住民の方々のためにも、
福島第一原発が早く復旧し、放射性物質の漏洩が止まるよう
深く深く願ってやまない。
原子力発電がこのような大き過ぎる犠牲を
払う可能性と共に存在していたことが
証明されてしまったけれども、
今現在、日本人は電気の供給なしに
暮らせないのも事実。
今後とも電気を使う生活は変わらないはずだが、
将来的には、原子力に頼っている発電エネルギー源を
徐々にでも他に移行することを考える必要が
あるだろうと、個人的には思う。
すぐに太陽光発電など自然エネルギーだけに移行するのは
実際問題として無理があるとしても、時間をかけてでも
代替エネルギーへの転換を図るのがベターだろう。
それに伴い、今後の家づくり、住まいのあり方も変わっていくと思う。
電力会社など、外から供給されるライフラインに
100%頼りきりにならないでも暮らせるような
エネルギー自立型住宅が理想だろう。
太陽光発電はもちろんのこと、それを蓄えておく家庭用蓄電池が
どの家庭でも安価に利用できるようにするなど、課題は沢山ある。
太陽熱温水器ももっと普及していいと思う。
今考えるととても原始的ではあったが、
エネルギー自給システムとしては十分に機能していたと思うのが、
以前よく地方の住宅の屋根に載っていた、太陽熱温水器だ。
私の親戚の家にもあって、そのお湯をお風呂に使っていたが、
夏には熱いぐらいの温度になっていて、驚いたものだ。
もちろん、現代では同じものではなく、
もっと高機能な太陽熱温水器が求められるだろう。
しかし兎に角、このような、いざという時にも困らない
エネルギー自給システムを備えた住宅をつくることは、
結果的に大きな省エネ、CO2削減にもつながるはずである。
エネルギー依存から発想を、スタイルを変えて自立型へ移行することが
求められていると思うし、いずれ必ずやそうなるだろうと、私は思っている。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。