2011年05月25日更新
地震に強い家を考える
3・11以来、地震に強い家について考えている。
まず、どこに住むかはとても大事だ。
これから転居、新築を考えるとしたら、
地盤が強固な場所を選ぶに限ると思う。
それから、海や河川のすぐそばの低い土地も避けた方が無難だろう。
大地震や大津波は百年に一度かもしれないが、
ゲリラ豪雨など雨による被害はもっと頻度が高い。
個人的には低い土地は選ばないことにしている。
いずれにしろ、住む場所を新しく決める時、
それが長く住む、家を買う、建てることを前提にしている場合なら尚更、
候補に上げている場所がどんな土地かを調べることをおすすめする。
自治体が出しているハザードマップをもらったり、
これまでに水害に見舞われたことがなかったかなど、
歴史から調べるぐらいの熱心さがあっていいと思う。
なにせ、長く住んで自分たちを守ってもらう、
いのちのうつわなのだから。
また、この機会に現在の家の耐震診断をしておくのもいい。
ごく簡単なチェックなら、
日本建築防災協会のウェブサイト
「誰でもできるわが家の耐震診断」
でできる。
これで不安を感じたなら、同サイトにも掲載されている、
資格を持つ専門家に耐震診断を頼むこともできる。
自分の住む自治体でも相談窓口があるはずだ。
多くの自治体では、(新耐震基準ができた)1981年
以前の住宅に対して、無料簡易耐震診断を行なっている。
また、耐震改修に助成金を出す自治体もあるが、
これに関しては要注意。
改修の前に「あらかじめ」自治体に申し込み、
自治体に認定された専門家が耐震診断および
耐震改修のコンサルティングをすることを
条件にしている自治体があるからだ。
耐震診断をする前の段階でまず、自治体に問合せた方がいい。
木造住宅では時間の経過とともに、
浴室、キッチンなどの水回り床下の土台や柱が
長年の湿気で腐っている場合もある。
長年といっても数十年という単位ではなく、
たとえば築10年でもあり得る話。
私の実家の浴室がそうだった。
2階にキッチンを付ける改修の際に、
浴室の改装と耐震補強をしたのだが、
浴室の内壁と床を取り払ってみると、
隠れていた柱が湿気と白アリでボロボロになり、
ほぼなくなっている箇所もあった。
このような隠れた老朽化に気づかずにいて、
ある日大地震に見舞われると危ない。
同様に、雨漏りにも注意したい。
外からの雨がどこかを経由して家内に漏っているのだから、
壁の中や屋根の下が腐っていることも考えられる。
羽アリや雨漏りを発見したら、一度専門家に相談するとよいだろう。
ただし、初めて問い合わせたリフォーム会社などに
その場ですぐ改修工事を依頼するのは考えもの。
実際に改修工事を頼む時は、
知人が工事をして満足しているとか、
複数の工事会社に相談、見積りを出してもらって
信頼できると感じたとか、事前によくリサーチ、
納得してから頼もう。
先日取材させてもらった、
江東区のエコリフォーム
代表、塩谷理枝さんによれば、
東日本大震災後、耐震改修の
問合せや依頼は増えているという。
右およびトップページの写真は、エコリフォームの耐震改修例。
改修する方の多くは耐震だけでなく、
他の老朽化部分、使い勝手の悪くなった間取り変更なども
一緒に工事をするそうだが、
とりあえず避難場所として寝室だけ、あるいは
出口への経路まで、など、家の中で潰されない程度の
工事だけしてもらうのも手。
東日本大震災はゆっくりとした長い横揺れだったので、
津波以外による家屋の全壊はさほど多くなかったが、
阪神・淡路大震災では、直下型の縦揺れだったため、
発災直後に倒壊した家の中で亡くなった方が多かった。
また今度いつ、直下型、縦揺れの大地震がくるかわからない。
せめて、住んでいる家に押しつぶされて、いのちを落とさないために。
できることから今、始めてはどうだろう。
耐震補強を含めて大規模改修をした、江東区のF邸の新しいリビング。設計・施工はエコリフォーム。
家の北側にあった浴室を解体してみるとこの通り。柱と土台がボロボロだった。
新しい木材と耐震金物で補強。
傷んでいた柱は撤去された。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。