2011年08月31日更新
スマートハウスの時代へ
今月のタイトルを「2011年夏を振り返る」と書きかけてふと、
前にも似たタイトルを付けなかったっけ。。と気になり、
このコラムのバックナンバーを見たら、やっぱり。
昨年同月、同じようなタイトルを付けて書いていたのだ。
なぜか私は、夏を振り返りたがる癖があるらしい。
しかし、これは私だけに限らないのではないか。
夏の終わりというのはちょっとさびしく、
振り返ってみたくなる何かがあるのかもしれない。
バックナンバーを読むまでもなく、
昨年の今頃は平和だったなぁと思う。
今春の大震災以後、何かが大きく変わってしまった。
福島第一原発の問題は解決するどころか長引くことが明白となり、
周辺地域を中心として、経済、生活に多大な影響を与えている。
いまだ避難をしていたり、自宅へ戻れなかったりする方々は
本当に辛く、大変な思いをされているはずで、深く同情申し上げます。
また、引き続き停止している各地の原発の影響で
予想された電力不足のため、企業はこの夏輪番操業となっているところも多い。
身近なところでは、多くの友人の休日が土日以外にシフトしているし、
平日の電車内が例年より空いている気がする。
日本がこれを機に方向転換し、原発による電力に依存し過ぎない社会へと
変われるのかどうかについては、ここで触れるのはやめておこう。
ただ、今後日本の住宅が次第に
「スマートハウス」化していくことは間違いないと、私は思う。
スマートハウスとは、エネルギー消費を最適にコントロールできる、
「IT利用の賢い創エネ+省エネ住宅」のこと。
具体的には太陽光発電でつくった電力を
家庭用蓄電池に貯めて夜間にも利用するなど、エネルギーを自給自足、
省エネ家電をITでつないでコントロールしながら賢く使う。
また、CO2を削減する社会に不可欠となる電気自動車を、
スマートハウスの蓄電池としても使う。
スマートハウスの実用化は始まったばかりで、
参入会社によって概念や規格が違ったり、
集合住宅では太陽光発電の設置場所が少ないなど課題も多く、
まだ実際に広く普及するには至っていない。
しかし、ITでどこまで制御できるかは別として、
これからの住まいには「創エネ+省エネ」が
欠かせないキーワードになるだろう。
エネルギーは自前でつくり、賢く使って暮らす時代がくる。
地域の電力会社から買う電気だけで生活する家は
過去のものになっていくと、私は思うのだ。
春から続く節電の夏、2011年の夏。
これを機に社会がよりよい方向へ。。などと軽々しく言えないほど、
多くを考えさせられた、絶対に忘れられない2011年の夏であった。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。