2012年09月26日更新
消費税増税と家づくり
ハウスメーカーはいま、スマートハウスへの
流れを急速に進めている。
私だって、再生可能エネルギーによる
エネルギー自立型の住まいには、おおいに賛成だ。
なぜなら、既存の燃料に頼るエネルギー消費には限界があるし、
環境も汚してしまうから。
さらには、国が決めた大手電力会社からしか
電気を買えないのは不満なので、電気を買う先を自由に選べたり、
自分でつくったりする方向性にも大賛成。
しかし。
今消費している分の電気を再生可能エネルギーで
つくればいい、という問題なんだろうか。
それで自家発電できれば「光熱費の節約」にはなるだろうが、
今消費しているのと同じ量の電気を自分でつくる、というのでは、
厳密には「省エネ」にはならないのではないか。
「省燃料」とはいえるかもしれないが。。
小さな発電所のような住宅を増やすことを主目的にするのでなく、
エネルギーをなるべく「使わなくて済む」、
本当の意味の省エネ住宅にシフトしていくことが大切なのではないか。
そんな当たり前の、原点に帰るような自問自答が
先日ある建築家の話を聞いて、浮かんできた。
四半世紀ほど前から存じ上げている、丸谷博男さんだ。
丸谷さんは以前から、パッシブソーラーハウスという考え方で
住宅をはじめとする建築を設計している。
パッシブソーラーハウスとは、太陽の熱や、
風などの自然エネルギーの恩恵を最大限受けられるように
建築的な工夫を施した家。
たとえば、家の庇を深く出せば、冬は日差しが入って家の中が暖まり、
夏は遮って、家内が熱くなり過ぎるのを防いでくれる。
そして、入ってきた熱を取り込んでおく蓄熱装置として
縁側や土間を設けるのも、パッシブソーラーとしての工夫といえる。
自然エネルギーを受動的に使うパッシブソーラーに対し、
太陽光発電など設備機器を使うものは、
アクティブソーラーということになる。
丸谷さんはいま、「そらどまの家」という
パッシブソーラーハウスの提案をしている。
冬は暖かい空気を、夏は冷気を、壁内、床下(土間)、小屋(屋根)裏に
循環させ、断熱を徹底、新開発されたエコ建材を使うなど、
建築の工夫である程度快適に過ごせる家だ。
屋上は緑化が望ましいそう。
詳しくは、丸谷さんのHPを参照されたい。
http://maruya.exblog.jp/
補助として使う冷暖房の理想的なかたちは「輻射式」だという。
ヒートポンプで熱を交換、冷温水をつくり
家内に配置された輻射冷暖房パネルに循環させる。
まだプロトタイプ段階だが、
実物をハウスビルダー、サーティフォーの
ハウスクエア横浜内モデルハウスで見ることができる。
http://www.thirty-four.co.jp/about/company.html#04
まず建築的な工夫で、自然エネルギーの恩恵を最大限受けられる
家としてつくる。
そのうえで、足りない分のエネルギーを自給できる、
パッシブとアクティブを組み合わせたソーラーハウスが理想だろう。
写真はいずれも丸谷さん設計の住宅。トップページの写真とこちらは、福岡県に建つパッシブソーラーハウス。通風と採光が計算され、日の出から日の入りまで、東西南北の光を感じられる明るい家。深い庇もポイント。
鋼鈑の防水工法「スカイプロムナード」を採用した緑化屋根。断熱効果で夏涼しく冬暖かく、耐震性もあるという。狭小敷地に建てる場合はとくに、庭代わりになる。宮城県の住宅。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。