2013年06月26日更新
片付けの極意とは
先日、あるメディアの取材で
「収納セラピスト」さんにインタビューした。
その取材内容が面白かったので、
このコラムでも紹介しようと思うが、今日はその前に。
取材しながら、「片付け」「収納」について考えたことを、
まず書いてみようと思う。
皆さんは片付けが得意ですか?
ご多分に漏れず、私も苦手です。
先日何かのアンケート結果で見たのだが、
「夫婦が抱く相手への不満」第1位に輝いたのが、
「互いの片付け方」だった。
これは面白い。
世の中、片付け上手な人も不得手な人もいるはずで、
夫(妻)は苦手だけれど妻(夫)は片付けが得意、という
組み合わせのカップルも絶対に存在する。
それなのに、片付け下手な人も上手な人も、
同居する相手の片付け方が気に入らないというわけだ。
これはつまり、自分の理想通りモノが収まっていないと
人はストレスを感じるのだ、ということなのだと思う。
こと、せっかく自分がきれいにした場所を
同居人が乱そうものなら、ストレスは倍増、激増するのだろう。
まあ、夫婦間の問題はさておき。
モノが理想的に収まっていないストレス。
この原因はどこにあって、具体的にどうすればなくなるのだろう。
第一の原因は当たり前のようだが、モノが多過ぎるのだ。
収容面積、体積に比較して収容物が多過ぎるからはみ出す。
これは自明の理。
ダイエットの法則とよく似ている。
痩せないのは、摂取カロリーが、消費カロリーより多いから。
逆になれば体重は必ず減るのだが、
世の中からダイエット法が消えないように、
片付けや収納も、方法の本がベストセラーになったりしている。
つまり、はみ出してしまったモノを収めるためには、
収納できる面積、体積に収まる分だけに
分量を減らすことが絶対に必要なのだ。
でも多くの人は、
「それはわかっているけど、捨てられないから困っているのよ!」
というところだろう。
しかし捨てること自体が、そんなに難しいのだろうか。
私が思うに、「捨てられない」のではなく、
単に「後回し」になっているだけではないか。
面倒くさい→後回し、
30分では終りそうもない→今日は時間が取れない→後回し、
ごちゃごちゃに詰め込んだ押入れの中を見る勇気がない→後回し。
こんな風に毎日、毎週、毎月後回しにして
結局1年、数年経っても同じようにモノがはみ出した家で暮らしている。
それを気に病むストレスも同じように溜まったまま。
この状態から脱するのは、案外難しくない気がする。
たとえば、一日一つ、何か捨てると決める。
洋服でも靴でも、賞味期限切れの食品でもいい。
ずーっと使っていない、何年も触っていないモノが
引き出しの奥に眠っていないだろうか。
一日一つ捨てれば、1ヵ月で30個のはみ出したモノが
なくなっているはずだ。
そう考えると、少し気が楽にならないだろうか。
本文とぴったり合っているとはいえないが、興味深いモノたちとの上手な
暮らしの例としてご紹介。アーティスト、配島庸司さんのアトリエにて。
右手の絵は上が草間弥生の版画「自画像」、下が斎藤真一の油絵「秋の色」。
左の棚は一段目が古い中国の焼き物、二段目が配島さんが染付けでドロー
イングした飯茶碗。5段目には伊藤公象作の茶碗が5個。長年親しんできた
コレクションをさり気なく並べて日常遣いしている。
あるいは、月に一度「棚卸し」の日を決めて、
今月は和室の押入れ、来月はキッチンの流しの下、など
モノを全部出して、入っているモノを見て、
取捨選択する日にしてもいい。
1日に1個、1ヵ月に半日なら、誰にでもできそうではないか。
わたくしごとで恐縮だが、
私の実家は、いつもすっきり片付いていて
床や階段や玄関にモノがはみ出ているということがなかった。
それはひとえに、亡くなった母が「捨てる人」だったからだ。
とにかく毎日、いらないと思ったモノを捨てる。
新聞、チラシ、郵便物、買物したお店の袋。
その日にはみ出したモノはその日のうちに、ポイ!
時には家族のモノまで勝手に捨てようとするから、
何度喧嘩になりそうになったことか。
でも、そういうことなのだ。
片付け上手な人=捨てる人。
増えた分だけ処分する。これなくしては、決まりきったスペースの
中にモノが納まらないのは当たり前。
まずは一日一つから始めてみてはどうだろう。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。