2013年08月28日更新
コーポラティブハウスという選択
コーポラティブハウス(以下コーポラ)という
集合住宅のスタイル、ご存じの方も多いと思う。
簡単にいうと、そこに住みたいと思う人たちが集まり、
将来の住人同士が建設組合を結成して建てる集合住宅である。
コーディネート会社が土地を選定、
建物を計画して企画立案、建てる人を募集する。
土地はほとんどの場合、便利な都市の一等地で、
一戸建てをこれから建てるには広過ぎ、
一般的な分譲マンションを建てるには狭過ぎるといった
10~20戸程度を納められる大きさ。
便利で魅力的な立地だが、需要が少ないために
市場で流通しにくい土地であることが多い。
コーポラの最大の特長は、都市部の一等地に
一戸建てを建てるよりは安価で、
内部が自由設計の住戸を新築できる、という点である。
逆にデメリットとしては、住人自らが事業主となり
責任を負う点や、建てて住むまでに
手間と時間がかかる点などがあげられる。
これまでコーポラに住んでいる方の取材を
度々させていただいたが、そこで感じたのは、
コーポラは集合住宅でありながら、
一般的な分譲マンションとは全く別物なんだな、ということ。
一般的な新築分譲マンションは、最新の高い性能や
豪華な外観、エントランスなどの共用部、設備機器などを
ウリにしている場合が多く、買う人はそこに
魅力を感じるのかもしれない。
対してコーポラは、耐震性や断熱性などの基本性能は
当然ながら最新の高い基準でつくられているものの、
見かけをよくするための、必要以上の共用空間や装飾はない。
共用部の余分なコストを極力抑え、
各住戸内を充実させたい人は、
個々にオプションで費用をかけるように
つくられるからだ。
また、よく聞かれる声では、
この場所にコーポラを建てて住みたいという
似た価値観を持つ住人同士のコミュニティが
心地よい、というもの。
私の友人の一人も、とあるコーポラに住んでいるが、
まさにそうした感想を話してくれた。
昨今は集まって住むとか、地域力、ご近所コミュニティが
見直されているが、その意味でもコーポラは安心感や
地域社会の一員として暮らす連帯感を
実感できるのかもしれない。
2層分のメゾネットタイプの住戸。トップライトも設けた伸びやかな余裕の空間。
1階の庭付き住戸。 リビングダイニングの中心に、多機能の大きなアイランドキッチンをオーダーでレイアウト。
写真はコーポラのコーディネート会社の一つ、
コプラスがこれまで手掛けた住まい。
実際にコーポラに住んでいる方の感想や
そのお宅の詳しい内容について書くには
今回はスペースが足りないので、
今後機会を見つけてご紹介したいと思う。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。