2014年01月29日更新
利用料が低額な軽費老人ホーム「ケアハウス」
このコラムではこれまで、高齢者用の住まい、
施設についても時々取り上げてきた。
種類や特徴についても書いたので、興味のある方は
バックナンバーを参照いただきたい。
特養
サービス付き高齢者向け住宅
今回触れたいのは、軽費老人ホーム「ケアハウス」。
公的補助が出るために、所得によって違いはあるが、
たとえば年金生活者なら、月々の利用料はかなり低額で済む。
例をあげると、年間所得が150万円以下なら
月額約7万円程度という安さだ。
7万円など、東京都内ならワンルームマンションの
家賃で消えてしまう金額だが、
ケアハウスはそれで3食お風呂付きで住めるのである。
福祉施設である軽費老人ホームには食事付きのA型、
食事なしのB型、そしてケアハウスの3種類がある。
ケアハウスは独立した生活に不安がある人が対象で、
一般型と介護型の2種類がある。
今回紹介するのは一般型。
60歳以上あるいは夫婦どちらかが60歳以上で、
身体機能の低下や独立した生活に不安があるものの、
身の回りのことは自分でできるなど、幾つか入居条件がある。
そして、要介護度が高くなった場合には
退去しなければならない。
介護型は重度の要介護度でも住み続けられるものの、
その分負担する費用が上がる。
月額利用料の他に入居一時金として、
管理費(家賃)20年分を一括または分割で支払うため、
50万~400万円程度が必要になる場合がある。
長所としては毎食の食事、入浴サービスの提供があり、
自由な時間が十分にもてること。
門限はあるが、外出も自由。困った時には生活相談員や
介護職員もいて、食事の際に安否確認もしてくれる。
こんなにリーズナブルで自由なケアハウスだが、
あまり知られていないのもそのはずで、
設置数が平成8年をピークに減っているのだ。
残念ながら、これから新設されることはないかもしれない。
急速な高齢化で、比較的元気な人のための
ケアハウスに公的助成を出す余裕が
なくなってきたためだろう。
現在、全国に供給されている軽費老人ホームの
居室戸数は約9万戸。入居希望者は、限られた数の部屋が空くのを待機するしかない。
入居に当たって注意すべきは、老人福祉施設であっても、
重度の介護や看取りまではしてもらえないこと。
特養や老人ホーム、病院などに移らねばならず、
次策を考えておく必要がある。
こうした制限はあるが、実際取材に伺ったケアハウスは
快適そうで、自分も将来条件が当てはまれば住みたいとさえ思うような場所だった。
入居一時金が用意できる人であれば、
老後の住まいの選択肢として、一考の価値があると思う。
入居を希望する場合は、地域包括支援センターか役所に
相談するか、ネットなどでリサーチして直接ケアハウスへ
連絡をしてみるとよいと思う。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。