前回に続き、所得に応じて公的補助が出る
経費老人ホームのケアハウスについて書いてみたい。
　今回は、東京・稲城市のケアハウス、
ハーモニー松葉さんを紹介しよう。

　ハーモニー松葉は老人デイサービスセンターを併設した一般型ケアハウス。
　約22㎡の個室28室、約47㎡の夫婦室１室全てが
現在満室で、30人の高齢者が暮らす。
　各個室にはキッチン、洗面所、トイレ、収納、ベッド、
エアコン、２ヵ所のナースコールがあり、緊急の場合は
職員が宿直も含めて24時間体制で対応してくれる。
　食事は一日３回提供、入浴は２ヵ所の浴室を使って
週４回。夏はシャワーは毎日使える。

　月額利用料は所得によって変わり、年収１５０万円
以下なら約７万円、３１０万円以上だと約15万円。
　入居一時金は20年間の管理費（家賃）の
約２分の１（３００万円）を前納。
それは毎月家賃として取り崩して使われ、
途中退去の場合未使用金は全額返却される。

　入居して３年のKさん（72）、
12年のTさん（77）、８年のSさん（89）の
３人の方にお話を聞いてみた。

　Tさんは一緒に住んでいたお母さんが亡くなって
一人になり、体調不安もあって入居。
　それから12年、庭いじりなどしながら、
マイペースで暮らせるのがいいのだそう。

　Sさんは身寄りがなく、住んでいた自治体の市役所に紹介されて入居。
「住み心地は最高です。近くのお医者様へ一人で
毎日歩いてリハビリに通っています」
と、もうすぐ卆寿と思えない元気な笑顔だ。

　一番若いKさんは手芸やカラオケが趣味。
Sさんも一緒のカラオケグループで毎週日曜の
夜１時間程、自慢ののどを鳴らす。
「月に一度、車で買い物ツアーや食事ツアー、
お花見ツアーなどを企画してくれるので、
皆さんと出かけるのが楽しみです。
自分でも近所へ買い物や銀行に行ったり、
自由で助かります。年金で暮らせるし、
ここに入ってよかった。幸せです」
と、満足そうに話してくれた。

ハーモニー松葉の玄関前で、施設長の恒松さん。
「アットホームな雰囲気の居心地よい空間を提供するよう、心がけています。
家庭の事情など困って来た方も多いのでここでは笑って暮らして欲しい。
『一日一笑』が合言葉です（笑）」

　施設長の恒松憲治さんはこう話す。
「ここは終の棲家ではなく自立型の施設ですので、
自分で食堂に来て、配膳、下膳ができる人に
暮らしてもらっています。
要介護１になると『出る準備をしてください』と
言わざるを得ないので『くれぐれも転ばないでよ！』と注意しています。
転倒で骨折、入院後に自分で配膳が
できなくなる人がいましたから」
と、入居者の健康を気遣う。

　現在、16人の待機者がいて、登録順に年に１、２人
入れ替わりがあるとか。
　恒松さんによれば、一般的に他のケアハウスでも、
夫婦室に空きがある場合が見られるのだとか。
　夫婦で希望すれば入居の可能性が高まりそうだ。

中島早苗の「心地いい場所」　バックナンバー

リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗

1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる！』『北欧流　愉しい倹約生活』（PHP研究所）『やっぱり住むならエコ住宅』（主婦と生活社）『住まい方のプロが教えるリフォーム１２３のヒント』（日本実業出版社）『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』（講談社＋α文庫）他。