2015年03月26日更新
リノベーションで大切なこと
今回は、マンションリノベーションで一番大切なことを考えてみたい。
以前このコラムで自宅マンションのセルフビルドリノベーションを
紹介した、神戸の設計事務所、アトリエ・フィッシュ・アーキテクチュア。
主宰するのは建築家の山下誠一郎さん、真未さん夫妻だ。
山下さんにはよく、取材先をさがしている時や、
セミナー講師を頼まれた時などに相談にのってもらうのだが、
豊富な知識をいつでも気軽に分けてくださるので、
勝手に私の「知恵袋」とさせていただいている。
その山下さんが、リノベーションに関して授けてくれた言葉が
以来、忘れられない。
曰く「大事なのは、どんなリノベーションをするかではなく、
どのマンションをリノベーションするか」である、と。
修繕積立を含む管理体制然り、いや、もっと先に見るべきは
建っている立地であり、建物の劣化状況も然り。
リノベーションしてこれから十数年、数十年住む価値のある
マンションかどうかをまず見分けるのが、
何より大事だということなのだろう。
これまで多くの住戸のリノベーションを依頼されてきた
山下さんだが、手がけた全てのケースで、
いざ工事が始まって解体してみると、
図面と違う何かしらの問題が発覚、設計や工事を
変更せざるを得なかったという。
「とくに、天井高が十分にない場合は解決が難しいです。
中古マンションを選ぶ時には、部屋として見えている
床面から天井面までの高さではなく、床や天井を剥がした時の
床スラブから天井スラブまでの高さがどれだけあるかを、
あらかじめ管理事務所に図面を見せてもらうなどして
確認した方がいい」
とのこと。
「集合住宅の売買で、面積しか記載されていないのが不思議です。
何平米、何坪って、二次元の話ですよね。
我々が暮らしているのは、三次元です。
本当は、容積で考えないといけない。
天井高さが2.4mの70平米と天井高さが3.5mの70平米では、全く異なった空間です。
でも、同じ70平米として売られている。
購入するのは、スラブ上からスラブ下までの容積です」
とも。
確かにそうだ。
中古マンションを買う際はできることなら、
天井裏なども点検口から見せてもらうとよいと思う。
どんなリノベーションをするか、の前に、
どの建物をリノベーションするか。
一番大事なことを、どうか忘れずに。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。