2013年12月04日更新
沖縄の我が家がようやく完成!超難産だったわけ
先月のこのコラムで、施主検査が終わり、そろそろ引き渡し、と書いてから約1カ月。この原稿がUPされる前日にようやく引っ越しが終わった。今年の3月に着工して8カ月。予定より2カ月も遅れてしまった。それには、いろいろな理由があるのだが、沖縄だから、ということもあるし、沖縄だから、ではないこともある。今回は、「沖縄だから」の建築事情について、ご紹介しよう。
沖縄だから、のんびりしていて引き渡しが延びたかといえば、そうではない。たしかに、「うちなータイム」といって、沖縄の人は待ち合わせの時間に家を出る、と揶揄されるほど、時間にルーズだと思われがちだが、こと、私の周りでは、あまり時間にルーズな人はいない。ましてや住宅建築に関わった職人さんたちの朝は早く、毎日8時半には工事がスタートしていた。休みは基本的に日曜日だけ。どの現場でも同じだと思うが、10時、12時、15時には休憩をとり、夕方暗くなったら仕事は終わり。残業という考え方はあまりない。それで1日の仕事の積み残しが、ズルズルと工期を遅らせたというわけではないのだ。
工期が遅れた一番大きな理由は、資材、建材など県産のもの以外は、内地からの取り寄せになるからだ。これが予定どおりに行かなかった。時は来年4月の消費税UP前の駆け込み需要で、全国的に資材、建材供給の遅れがあると聞く。工事がストップしたのは、アルミサッシ、ガラスが届かなかったからだ。窓が開いたままでは、内装工事、仕上げに入ることができない。そのため数週間の待ちの状態が続き、現場が進まなかった。
施主から言わせれば、設計図はできているのだから、早く発注をすればよかったのに、と思うのだが、我が家の場合は、RC造の打ちっ放し。コンクリートの仕上がりに合わせて、現場で採寸をしてからの発注になるという話だった。本当かどうかはわからない。ただ、実際に、特注品ではなくメーカー既成サイズの完成品で対応した数カ所は、いつまでたってもドアが入らなかった。
もうひとつ、遅れた大きな理由は、やり直しの多さだった。これは「沖縄だから」というよりも、沖縄特有の住宅仕様も関係した。
設計も建築会社も、職人も、みんな沖縄の人。沖縄の暮らし方が身に付いている。施主の私だけが東京スタイルの住宅で生活していた。沖縄にはアパートを借りて4年前から生活しているので、ある程度の沖縄事情は理解したつもりだった。それに、沖縄特有の気候にあった住まいを作るという点においては、家づくりに関わる人たちが、十分な知識と経験があるので、かえって安心していた。
しかし、工事が進むにつれ、「私は、こうなると思っていたのに、違った」ということが多発した。たとえば、生活する室内のドアにドアクローザーを取り付ける、という感覚がわからなかった。どうだろう?みなさんのご自宅の部屋のドアを見てほしい。ドアクローザーがついていることは稀ではないだろうか。
沖縄では強風になることが多く、特に海に近ければ海風が強く吹き付ける。窓を開けている分には、涼しい風が通り抜けて気持ちがいいのだが、ドアに関しては開けっぱなしにしていると、バタン!と大きな音が出るので、室内ドアにはドアクローザーを取り付けるというのだ。これで揉めた。結局は、私の生活パターンでは無用(見た目も悪いので)、ということで取り外してもらったが、こうした行き違いがあちこちに出てきたのだ。
施主、設計、建築会社、職人とのコミュニケーションがもっと取れていれば、防げたことも多いが、良かれと思って工事してくれたことに対してのやり直し要求は、施主といえども言いにくさはあった。それでも最低限のやり直しをお願いした。こうしたやりとりで、約1カ月は工期が延びてしまったのだ。
■台風、シロアリ、西日対策が三大沖縄仕様
沖縄といえば、台風の通り道とも言われ、毎年、大きな被害が出る。しかし、沖縄では台風対策に慣れているせいか、住宅の被害は意外と少ない。その台風対策のひとつに、窓、サッシの独自の仕様がある(窓、サッシの話ばかりで恐縮だが)。台風で一番注意しないといけないのは、もちろん物が飛ばされないように外に置いてあるものを片付けること。でも、室内も安心はできない。暴風雨になると、まるで雨が地面から降っているかのような状態になる。すると雨が窓の下から侵入してくるのだ。これを防ぐために、沖縄のサッシの構造は特殊なつくりになっている。マンションも同じだ。
先日、那覇市の新都心、「おもろまち」に建築中の大規模タワーマンションのモデルルームを見学したのだが、そのときに見た窓ガラスの厚さは相当なものだった。加えてサッシ枠も頑丈で、もちろん吹き込み対策も万全だった。以前、大型台風に見舞われたとき、那覇市に住む知人のマンションでは、室内に雨が侵入して大変な思いをしたと聞いたことがある。同じ沖縄で建てられたマンションであっても、必ずしも沖縄仕様ではないんだと思ったものだ。
他にも沖縄仕様がある。
たとえば、断熱材。今では断熱材を入れるのは当たり前だが、沖縄では特に床下の断熱材については慎重だ。シロアリの被害があるからだ。寒さにめっぽう弱い私は、床下に断熱材を入れたかったのだが、設計に反対されてあきらめた。天井は猛暑を防ぐために断熱材を入れたのだが、さてこの冬、乗り切れることができるだろうか・・・・・・。
それともうひとつ、西日対策だ。沖縄は南北に細長い。西海岸の海に沈む夕日は、見ているだけで癒されるが、住まいにとっては難敵。さえぎるものがないので、強烈な西日が部屋の中に差し込んでくる。沖縄の家では、たとえ海に近くて素敵な景色が目の前にあっても、西側を閉ざした家が多い。それだけ西日はキツイのだ。沖縄移住者は西側の景色を求めるが、実は、住んでからが大変。結局はカーテンを閉めたりして景色を見なくなる人も多いようだ。マンションでも「海が見える=西日がきつい」ので、西向きの部屋を購入するのは、移住者がほとんどという話だ。
我が家の場合も、西側が開けているので、西日対策にマスブロックというものを積み上げた。真中が空いているブロックで風も通り抜ける。沖縄では、マスブロックや花ブロックといわれる真ん中が空いているものがよく使われている。防犯、日当たり、風除け、風通しをちょうどいい具合に調整してくれるすぐれものだ。
工期は遅れたものの、なんとか希望に近い我が家が完成した。外構工事、造園工事、ウインドートリートメントはこれからだ。屋上の防水工事もしなくてはならない。塩害対策の補強もしなくてはならない。住み始めたら、すぐにメンテナンスのことも考えなければならず、一戸建ては建てて終わりではなく、建ててからがスタートだと思う。マンションはつくづくラクだったな、と思うが、やはり、のんびりと暮らしたい私にとっては、家ものんびりと育てていこうと思っている。
『私、沖縄に移住しました。』が電子書籍になりました(2015年9月25日)。
「あれから2年。沖縄で過ごした春・夏・秋・冬」も書き下ろし。どうぞご覧ください。
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周囲に高い建物がないため西日はかなりきつい。2階から海が見える眺望を生かしたが、1階はマスブロックで西日をさえぎることに。窓を全開にしてもブロックのおかげで、視線も気にならない。
- フリーライター(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
伊藤加奈子 1963年生まれ。法政大学文学部日本文学科卒。リクルートにて不動産、住宅、マネー系の編集部を経て2003年に独立。以降、フリーランスでライフスタイル誌の創刊・編集に携わる。のち、マネー誌の編集アドバイザーを務め、現在は、主にWEBサイトで住宅、マネー関係の記事を執筆するかたわら、25年の編集者経験を生かし人材育成に努める。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。All About マネーガイド
2013年4月に住み慣れた東京を離れ、沖縄に移住。と同時に、RC住宅を建築することを決め、2013年3月着工。11月に竣工した。