2010年02月17日更新
建築家がお手伝いするリフォームのススメ
最近、僕らの事務所にリフォームの相談が増えています。ホームページに無料相談窓口から毎月5~6件の相談があります。一般的な費用やスケジュールについての概要を知りたいといった相談が大多数ですが、どんな会社にどのようにリフォームを頼むのがよいのかのアドバイスを求められることもありました。
知り合いの建築家に尋ねてみても、新築の問い合わせが伸び悩んでいるのに比べて、リフォームの相談は確実に増えているそうです。
10年ほど前に誰かがリフォームを思い立ったとしても、お願いできる相手は町の工務店か内装系のリフォーム屋しかありませんでした。ところが今では、多様な会社がリフォームに取り組み、新聞や雑誌は彼らの広告だらけです。何を基準にして、どこを相談相手に選べばよいか全く判らない時代になってきているのではないでしょうか?
事実、幾つかの問い合わせは「数社の業者に提案と見積りを依頼したが、内容がマチマチで、金額も比較できないほどバラバラで困っている。第三者としてアドバイスしてもらえないだろうか」といった内容でした。
ご依頼があって各社の提案・見積りを拝見してみると、要望はそれなりに満たしていても空間としての提案がないものや、素材は自然系で素晴らしくても機能性に不安がある提案、間取りも材料も素晴らしいが、価格が想定をはるかに上回っているケースなどマチマチです。
前提条件が違えば、提案内容もバラバラになります。機能が重要なのか、空間性が求められているのか、費用が絶対条件なのか、スケジュールが問題なのか、施主の見積り依頼時の説明によってリフォームの内容も変わってしまいます。それらを各社が自分の得意な分野に引き寄せながら提案を作成することで、全く比較することが出来ない資料が集まることになってしまうようです。
建築家にリフォーム設計の依頼をするのは、まだまだ敷居が高いようですが、いざ自宅のリフォームの整理がつかないという緊急事態になって、セカンドオピニオンとしての信頼性が持てる相手を探してみると、建築士の資格を持った建築家が頼りになりそうに思えるようです。
僕らの事務所ではこういった相談に対し、有料サービスになってしまいますが、リフォームの条件を整理した上で、各社に再度見積りを依頼したことや、見積りの内容を査定した上で面接まで行い、一番適切な業者を選ぶお手伝いすることもあります。場合によっては、要望を伺いながら、こちらで設計を纏めなおして、幾社かの業者に相見積もりを依頼して、工事の監理までお手伝いしたケースもあります。
小さなリフォームであれば、信頼できる工務店が見つかれば、建築家のアドバイスも不要です。しかし、500万円を超える大型リフォームや、数社に相見積りを依頼するような大規模リフォームの場合は、ぜひ建築家に相談してみてください。
前提条件の整理や簡単なリフォームプランのまとめ、さらには構造や断熱についての考え方、材料選びのアドバイス、金額やスケジュールのザックリとした意見、バランスの良い有用なアドバイスが必ずもらえます。初期費用が掛かってしまう可能性もありますが、それ以上に全体の費用の節減や、家族間の問題の整理や、何を信頼して、どのように計画を進めれば良いかの目安が得られるハズです。どうぞ建築家をリフォームの相談相手として利用してみてください。
写真は上記のような相談から発展して、最終的の僕らが設計することになったマンションリフォームの事例です。色を使って明るく楽しく印象的なリフォームになったと自負しています。
グリーンのダイニング・キッチンからブルーのリビングが見えています
赤い壁が印象的な玄関ホール
落ち着いたタイル張りの浴室と真っ白な洗面室
- 建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ) 1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/