別荘は親の代から持っているのに、最近はあまり使っていないという方が結構いらっしゃるのではないでしょうか？1970年代の観光・リゾート開発ブームに乗って建てられた別荘が、いまでは使われることなく放置されている例がたくさんあるようです。今回は、そんな古びて皆に使われなくなった別荘を、お孫さんたちも大喜びの活気ある別荘にリフォーム再生した事例をご紹介します。

　伊豆半島の山の中腹から海と山が同時に見える、素晴らしい敷地に建つこの別荘は、36年前に、お施主様のご両親が建てられたものだそうです。子どもたちが小さい頃は、費用が掛かるホテルや旅館よりも、自由に遊べて、いつでも気が向いた時に行けるこの別荘を愛用していたそうです。別荘を持つこと自体がステータスであった頃なので、友達を招待してのBBQや子どもたちのスポーツ合宿などで、親族の誰かしらが予約していてキャンセル待ちリストを作ったこともあるそうです。

　しかし、子どもたちの受験やクラブ活動が始まって、両親が歳を取ってゆくに従って、この別荘を使う回数も段々と減り、最近は春秋の季節が良い時期に、年に二回ほど使う程度になっていました。行く頻度が落ちると同時に、浴槽からの水漏れや、雨戸の開け閉めの面倒さや冬の寒さの問題、キッチンやトイレの古さまでが気になるようになり、さらには地震対策をしていないことへの不安などが顕在化し、売却することも考慮するようになったそうです。

　古い別荘を売却しても、本当に大した値段にならない事が判った時点で、建て替えとリフォームを同時に検討し始め、別荘リフォームの実績がある我々にご相談がありました。早速、現状を視察調査したところ、耐震性に対してはある程度の補強で十分であり、間取り的にもスケルトンリフォーム（骨組みまで解体した上でのリフォーム）を行えば十分使えることが判りました。

　また、費用的にも、建て替えの約半額で全面リフォームが可能とのお話をしたところ、その方向で進めることになりました。当初あまりコストをかけず、設備や仕上げの交換などで済ませることも考えられたそうですが、我々と話をする中で、親との思い出のある別荘を、孫にも喜んで使ってもらえるように再生したいというお施主さまの強いお気持ちが段々と強くなっていったそうです。

　最終的に基本方針は以下のように定め設計を進めました。

　・急勾配の階段は使わず、新たに玄関を増築すること
　・コンクリートが傷んでいた基壇部分には大規模な補強をすること
　・断熱補強に加え、全面床暖房を設置すること
　・水周り空間を整理し、設備を一新すること
　・皆で料理を楽しめるきれいなアイランドキッチンを作ること
　・前面の庭の広さを生かした、BBQも可能な広いウッドデッキをつくること
　・天井の高さを活かして、お孫さんが遊べるロフトを作ること

　設計4ヶ月、予算調整の1ヶ月を挟んで3ヶ月の工事で完成したリフォームがこの伊豆Ｋ別荘です。東京在住のお客様との打合せは頻繁に行えたのですが、現場の監理が大変でした。このケースでは信頼できる工務店の協力のもと、スタッフの笠原君には毎週に現場に行って貰うことで、大きな問題なく完成することができました。

　リフォーム後初めて訪問したお孫さんたちは、登り壁とスベリ棒のあるロフトに夢中になり「この家に住みたい！」と言ってくれたそうです。お子様たち家族も、快適なお風呂や眺めの良いキッチンに広いデッキが快適だと喜び、お施主様も床暖房や窓の電動シャッターの便利さで、誰かが行かない週末は無いほどの人気に復活したとの嬉しいお言葉を頂きました。

　別荘のリフォームというと、現地で出入りの工務店に頼むケースが一般的なようですが、壊れたお風呂の修理や、キッチンの入れ替え、ドアの修理など対処療法になってしまうことが多いようです。地域の気候的な特性を良く知っており、何か不具合があった時に直ぐ来てくれる便利さは捨てがたいですが、費用を掛けて、見捨てられた別荘を思い切ってリフォームするのであれば、是非建築家の力を活用してみることをお勧めしたいと思っています。

お孫さんたちが夢中になって遊ぶロフト