2010年06月23日更新
軽井沢のロハスリフォーム 二拠点居住の可能性
土地と中古物件探しからお手伝いした軽井沢の別荘のリフォーム事例を紹介します。 子どもが生まれたことで、都心の賃貸住宅が手狭になり、自宅をどのように考えるべきかをこのお施主様からご相談されました。当初は都心の土地の価格を考え、無理して一戸建てを建てるより、中古マンションを購入してリフォームして住むことをお勧めしていました。途中で全く別の発想から、「平日は都心でコンパクトに暮らしながら、土日祝日は郊外で広々と暮らす」というライフスタイルを提案をしたところ、とても興味を持ってくださいました。
都心からのアクセスや、ご実家との位置関係、買い物や病院といった生活インフラ環境、さらにはもし売却することになった場合のリセールバリューまで考えた上で、軽井沢が候補に挙がりました。土地勘がつくまではご自分たちで探しても貰い、ある程度候補物件が溜まった段階からアドバイスを始めました。幾つか見学した中で、不動産業者が「あまりにボロボロで見ても無駄だと思う物件がありますが…」と言われた中古物件が目に止まりました。敷地形状や周りの環境が良かったことに加え、築45年の平屋ながら基礎構造がしっかりしており、何より古家屋だったので価格もほぼ土地代分だけでした。耐震補強や断熱リフォーム、設備の刷新まで含めた大規模リフォームをするにはそれなりの費用も掛かるので、購入コストがリーズナブルであることも絶対条件だったのです。
このリフォームのテーマは、LOHAS(ロハス・健康と環境、持続可能な社会生活を心がけるライフスタイル)という考え方としました。本来は打ち捨てられて、壊されてしまう建物を、断熱性能を増すことで暖房効率を良くし、自然素材を全面的に使用することで、環境にも健康にも優しい半居住タイプの別荘とする考え方です。
間取りとしては、かつては南と北に別れていたリビングとダイニングキッチンをつなげることで、家の中心に広く明るい家族の集まるスペースを作りました。リビングの東面には薪ストーブコーナーを据え、大谷石の床と木張りの天井で囲み、気持ちよいコーナーを作り出しています。西面には、作り付けのカウンター収納に子ども用の出入り口を設けています。登り棒と合わせて、子どもたちの人気コーナーになっています。キッチンにはこの家のシンボルともいえる大きなアイランドカウンターを設置し、広々とした景色を眺めながらの調理が可能となりました。
水周りはほぼ全ての位置を変えています。従来玄関があった箇所に、眺望の良い浴室を移設し、元の浴室部分はコンパクトな書斎へと転換しました。フリーで仕事をしているご主人が、平日でも仕事ができる仕事部屋を兼ねたスペースです。
南面には、樹木まで取り込んだ大きな木製のデッキスペースを作り、リビングが外部に流れ出し、別荘生活の巾が広がることを意識しています。外壁と屋根を残して、それ以外はほぼ全て解体してのスケルトン(骨組み)リフォームだったので、十分な構造補強と断熱改修に加え、床暖房まで設置することができました。
リフォーム完成から既に三年半近くが経っていますが、今でも平均して月に二回以上は使ってくださっているようで、超都心のコンパクトながら利便性抜群の家と、広々とした軽井沢の自然に囲まれた大らかな環境の二拠点居住のライフスタイルを楽しんでいらっしゃいます。
共に位置を大きく変えた水周り。左:大きなアイランドキッチンカウンター、右:かかつては玄関だった緑あふれる浴室。
細かく用途別に区切られていた間取りを大きくまとめ、使える木製サッシや家具は再利用しています。
珪藻土、大谷石、天然木のフローリングの空間は子どもが遊ぶのにも最適な空間です。
休日に家族揃ってウッドデッキで過ごす休日は、何物にも替えられない贅沢だそうです。
- 建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ) 1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/