2010年07月21日更新
二世帯住宅のリフォーム
最近、マンションリフォームと並んでご相談が多いのが、二世帯住宅のリフォームです。ここ十数年来、都心部では高騰化した土地の価格と高齢化した両親のケアの問題が重なって、二世帯住宅というスタイルが多く生まれてきました。
しかし、祖父の代に建てられた二世帯住宅に、代替わりした両親と結婚した子ども世代が一緒に住もむことになっても、プライバシーに対する考え方や水廻りの老朽化などで、大きく手を入れたリフォームが必要になってきているようです。また、大きな一軒家に暮らしていた両親の処に、孫の出産・成長や本人たちの加齢など、ライフステージの変化をきっかけに、同居を始める形での二世帯化の動きも増えてきているようです。
どのパターンにしても二世帯住宅のリフォームで重要なポイントは、誰と誰が何を共有し、どこを独立させるかという距離感の扱い方だと感じています。そこには画一化した解答例はなく、親子世帯の普段の付き合い方や親密度、プライバシーの考え方によって、リフォームプランの組み立て方をきめ細かくて行くことが必要だと考えています。
ここでは、親・子世帯の動線が重ならないことで、お互いが気兼ねなく暮らせる二世帯リフォームの事例を紹介します。
かつては家族5人で暮らしていた築30年の鉄骨造3階建住宅でしたが、相談を受けた当時は、70代のお母様がお一人で暮らしていました。元々近所に暮らしていた息子さんご一家(夫婦+子ども2人)が、親の世話と無駄な空間の活用を考えて一緒に住む事になり、リフォームの計画を練り始めました。外階段から入る二階には、二世帯共通のリビング・ダイニング・キッチンと洗面・浴室を設け、その奥にお母様の寝室を配置しています。かつてはダイニングキッチンとリビングの二つに分かれていた空間を、一つの大きなLDKとして繋げ、設備類も全面的に交換しています。
お母様の寝室には、ウォークインクローゼットの中に専用で使えるトイレを用意し、そこを通り抜けて洗面・浴室に直接行ける通路を用意しました。この動線(通路)があることで、リビングを通らずに外出することも、お風呂に入ることもできるので、それまでのように誰にも干渉されないで気ままに暮らす事も、或いは孫たちと一緒に楽しく賑やかに暮らす事も、お母様の意思次第で可能になりました。
三階は子世帯専用のスペースとし、寝室の他にミニ・リビングを作っています。下の階のお母様が寝たあとでも、このミニリビングでは音を気にせずテレビを楽しむことも、ゆっくりご夫婦だけでお茶を楽しむこともできます。寝起きの時間帯がずれているお母様に気兼ねなく過ごせる空間を用意したことで、二世帯で一緒に暮らすことのストレスも軽減できたようです。
この事例の際でも、リフォーム設計で一番心掛けたことは、じっくり時間を掛けて、家族全員の意見を聞いてゆくことでした。皆で集まって話している際には言いにくい意見が必ずあるはずで、それをどのような形で設計者が拾い上げてゆけるかが、二世帯住宅リフォームの大きな鍵になっていると信じています。
二階の間取り図。緑の部分がお母様のプライベートゾーンで、
黄色のラインを通れば、
トイレ、洗面、浴室、さらには玄関へと
誰にも干渉されず、通路が確保できます。
ダイニングキッチンとリビングに別れていた空間を一つの大きなLDKとして繋げました。
構造的に撤去不可能だった鉄骨柱には、麻縄を巻いてデザインのポイントとしています。
上階の若夫婦のミニリビングは、平日の夜中や休日の朝、若夫婦だけの時間が
確保できる貴重な空間です。
既成のユニットを組み合わせて作った大型キッチンです。右手に見える茶色い壁の裏に、冷蔵庫や炊飯器、電子レンジなどの機器類を隠しています。
【おすすめリンク】 |
二世帯住宅リフォームを多数掲載!建築家による作品事例はこちら |
注文住宅人気ランキングをチェック! |
「腕のいい建築家を地元で探す」が理想の住まいへの近道 |
- 建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ) 1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/
記事はありませんでした