2010年09月22日更新
二世帯住宅からのリフォーム
先回紹介した二世帯住宅のリフォームは、正確には、一世帯住宅を二世帯住宅にリフォームした事例でした。今回は、二世帯住宅を一世帯住宅にリフォームした、逆の事例の紹介です。
もともとこの住宅は、ご両親一家が二階に、一階にはお爺さま夫婦とその妹さん夫婦が暮らしていた三世帯住宅でした。今回、結婚して子供が二人いる息子さん夫婦が、空いていた一階に移り住むことになり、全体をリフォームすることになりました。
予算的に限度があったので、二度に分けたリフォーム計画を立てました。初回のリフォームでは、バラバラだった一階の二戸をどのように繋ぐかが一番の課題となりました。オーソドックスに考えれば、接している部屋の壁を破って2世帯を繋げるのが一番簡単ですが、そうなると部屋を通り抜けないと隣の住戸に行けません。そこでお風呂だった個所と外部を貫いて廊下を通すことを考えてみました。元々小さなお風呂が二つ、キッチンも二つあったので、お風呂二つをつぶして、キッチンだった個所を一つお風呂に変更すれば、水回りの数も合ってくるとの考えもありました。
この計画で初回のリフォームを実施しましたが、予算の限度を見ながら工事だったので、撤去した扉は捨てずに転用し、古い洗面台も移設したり、キッチンも交換することができませんでした。唯一、リビングの雰囲気を変えるために大好きなコーヒーカップを飾れる食器棚を造作家具で作りました。
その5年後に行われたのが、二度目のリフォームでした。動線的な問題はすでに解決していたので、狭く感じていた空間を広くすることや、キッチンを新しくするなど、目に見える部分に大きく手を加えることができました。
広い住宅でありながら、廊下の面積が大きく、キッチンが独立していたので、このリフォーム設計では、キッチンと廊下をリビング・ダイニングに取り込み、大きなLDKとして、広さが実感できるように計画しました。新しいLDKは、カナメの位置にあたり、家族皆が通りぬけるダイニングにセミオープンのキッチンが面している形になりました。セミオープンのキッチンで問題になる電子レンジや炊飯器、食品の保管場所は、以前のトイレだった個所に手を加えることでパントリー収納を作り解決することができました。それまで一人で調理していた奥様が、皆がいるリビングに面したキッチンで料理できるようになったことが、家族にとって一番嬉しいリフォームの成果だったそうです。
先回のリフォーム時に作った食器棚も、取り外すことを想定していたので、そのままキッチンカウンターと並ぶ棚として転用し、テレビカウンターまで同じ色でそろえた長い作り付け家具のパーツとして上手く働いてくれています。
古かった洗面台や、トイレも新調し、男の子と女の子が一緒に寝ていた子供部屋も、収納を区切ってプライバシーを確保することができました。
間に5年の年月を置いての、慎重な二度に渡るリフォームだったので、お施主様と設計者、工事業者の三者の信頼関係を築きながら計画を進めることが出来ました。すべてを欲張って、予算を超えてしまうこともなく、子供の成長に合わせた的確なタイミングでリフォームができたことが、成功のポイントだったと思っています。
キッチンから食器棚、テレビカウンターと一列でつながる造作家具
奥にパントリー収納を備え付けたセミオープンのキッチン。
シンクの奥の白いボックスの中に冷蔵庫が隠されています。
初回のリフォームで作った食器棚も、二度目のリフォームで落ち着き場所を見つけました。
リビングとウッドデッキでくつろぐSさまご一家。ウッドデッキも今回のリフォームで作りました。
二度のリフォームの変遷プランです。黄色が廊下で青がリビングダイニングです。
- 建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ) 1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/
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