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建築家リフォーム

2012年04月18日更新

快適なトイレ空間へのリフォーム

 トイレのリフォームについてインターネットで調べると、とかく便器の交換、その便器の機能やサイズといった、機器の使い勝手の問題ばかりが大きくピックアップされており、トイレを住宅の一つの空間としてとらえて、その快適性や、他の部屋・廊下等からの繋がりなどについて書かれている記事が少ないことに驚きを感じています。

 小型トイレが発明されてから、トイレ空間の縮小傾向が以前にも増して加速していますが、狭いからこその重要度も以前以上増しているのではないでしょうか?家族の誰もが、毎日必ず使うとても大切な場所ですから、住宅をリフォームする際には、既存のトイレに何らかの問題がないかを入念にチェックしてから設計を開始するようにしています。因みに、レストランを専門に設計している人たちの間では、レストランのトイレをどのようにデザインするかで、その設計者の腕が判ると言われているそうです。つまり、食事をする場所からは適度に空間を離しておく必要がありますが、インテリア的にはお店の雰囲気を損なうことがなく、ちょっと楽しい工夫と清潔なイメージ(そのための清掃しやすさも重要です…)と使いやすさが必要でありながら、あまりコストは掛けたくないと、背反する条件を限られたスペースで実現する必要あるので、設計・デザインが難しい部分だということなのでしょう。

 住宅のトイレリフォームでは、そこまで厳しい条件は重なりませんが、やはり狭いながらも、落ち着いた空間で、お掃除もしやすく、少しでも快適な場所として設計したいものです。上記の中でも、重要な要素である「落ち着いたトイレ」にする上で大切なことは、実はトイレと他の部屋や廊下との関係にあるようです。キッチンを通って出入りするようなトイレを想像してみてください。トイレの中に居る人は、自分が用を足している音がキッチンに伝ってしまうのではと思うと落ち着けませんし、キッチンで調理している人も、トイレ臭いが気になりそうです。ところが、平面で見るとトイレとキッチンが隣り合っていても、一度廊下を経て、違う場所から出入りするのであれば、ほぼ問題はありません。どこから、どのような開きがっての扉でトイレに出入りするかで、落着き度が大きく違ってきます。住宅設計の教科書には、人が頻繁に通る廊下から角を曲がってちょっとそれた個所にトイレの入り口を付けるのが良いと書かれています。スペース的にそれが難しい場合でも、トイレの扉の開き勝手を工夫して、玄関や居室から便器が直接見えないようなレイアウトには最低でもしたいところです。床下の排水経路などの条件で、トイレを移設できるかが決まってきますが、移設できない場合でも、右図のようにトイレの向きを変えたり、扉の位置を変えるだけでも、驚くほど落ち着いて使いやすいトイレにリフォームすることも可能です。

 来客の多い家では、家族用と来客用でトイレを二つ設けることが理想ですが、二つ作る余裕がない場合は、洗面所経由ではどうしても洗面所の生活感が気になるので、なるべく廊下から直接入れる配置にしましょう。スペースを大きめに確保して、扉が廊下側ではなく、トイレ側に開くようにして、廊下を通る人と扉がぶつからない工夫が必要です。二つ用意できる場合は、来客用トイレには、バッグを置けるカウンターと手洗いや、化粧直しができるボールと水栓に鏡は用意しておきたいものです。
それぞれの家族にその家族なりのトイレのルールがあるので、読書スペースとして使えるように本棚を用意したり、小さな展示場的に趣味の物や写真を飾れる棚を作る、子どもの勉強場所として、地図などを張る壁を用意するなどの対応も必要になってきます。お年寄りがいる家では、手すりも必要ですし、トイレットペーパー置き場や清掃用の道具をしまう場所も考えておく必要があります。毎日使う場所だからこそ、空間としての豊かさが必要で、狭い空間だからこそ、楽しく癒される場所が求められるのだと信じて、設計しています。


人造大理石のカウンターに陶器の洗面ボールを埋め込み、
木製フレーム付きの鏡や突板の収納で、化粧室として使えるトイレに


玄関横に作られたトイレへの入り口。左側のリビングへの扉より、右のトイレの扉を小さくし、
扉を開けても便器が見えないレイアウトとしている




リビング・ダイニングを一体化するタイミングでトイレもリフォーム。
便器や手洗いの位置をほとんど変えず、変形だが使い勝手が良いトイレになった




玄関近くに作られた来客用トイレ。子供たちが外出から戻った時に
手を洗うことの優先度が高かったので、手洗いをトイレの前室に設けた




建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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