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建築家リフォーム

2012年09月19日更新

リフォームで考える子供部屋のあり方

 「リフォームで子供部屋を作りたいが、設計者としての経験上、どのような部屋が良いだろうか?」という悩ましい相談が多くなっています。子供が小学校や中学校に上がったことをキッカケに、自立心が付くように、また兄弟を別の部屋で寝させたいと、子供部屋を作りたいという要望は、以前から多くありました。現在では、「勉強ができる子供の部屋」の情報なども加わって、一概に子供の部屋を作ってあげれば良いと思わない人も増えてきたようです。自分が子供だった時のことを考えると、部屋がもらえて嬉しかったのは、決して勉強に専念できる訳ではなかった気がします。親の目が届かない個室で、漫画を読みふけったり、友達とこもって遊びに夢中になったりできることが嬉しかったことを思い出します。

 「家は子供のために建ててはならない」親の家の一部を、必要な期間だけ子供に「貸す」だけ。そんな考え方を提唱している人たちもいます。子供が小さい頃は家族がそろうリビングダイニングで過ごし、オモチャが乱雑に散らかるようであれば、リビングのコーナーに収納付きのプレイコーナーを作り、小学生まではダイニングテーブルで勉強となります。思春期で個室が必要になった時も、あくまでも親の空間を借りているという認識をもって貰うために、ベッドがかろうじて入る程度の小さな鍵なしの部屋というパターンになります。もっと過激(?)になると、子ども同士で一年毎に部屋を交換させることで、借りている意識を強く判って貰うという事例もあるようです。

 全く反対に、子どもは早いうちから自分用の個室で寝て、親とは別の個人であることを教え込むというスタイルのお宅も勿論あります。欧米などでは、2~3歳くらいの子供でも、一人で寝室で寝ていることも見受けられます。また、親が自分の子供時代に欲しかったような子供部屋を望むケースもあります。ただ、子どもの成長は親が思う以上に早いですし、喜ぶと思って作った凝った子供部屋が、以外と早く子供に飽きられてしまうケースも見たことがあります。

 両極端のお話を紹介しましたが、僕らの設計では、なるべく完全独立型の子供用個室はなるべく避けて、何らかの活動を個室以外でできるような工夫をしています。例えば遊ぶ空間については個室の外に子供用のプレイコーナーを作ったり、本棚や勉強室については、家族共用の家庭ライブラリーを考えたり、洋服収納は廊下を挟んだ反対側に兄弟共有の物を作ったりと、子どもの生活に必要な要素を分解して、家の中に分散させるようにすることで、「籠もれない個室」にするように配慮しています。

 特にリフォームでは、家の面積に限度があるので、それを逆手(?)にとって、小さな子供部屋を作るようにしています。ただ、書斎を欲しい父親と個室が欲しい子供の綱引きが起こるケースも多々あります。そんな時は、父親と子どもが時期に応じてお互いの空間をシェアすることを提案しています。子供が本当に個室が必要なのは、(寝る時間帯が親たちと変わってしまう)受験勉強時や、思春期のプライバシーが欲しくなる高校+大学時代は子供に譲るが、それ以外は親が書斎として使うというアイデアです。限られた空間の使用権を、親子で話し合って交渉するワケです。

 他にも、間取り的に可能であれば、外から帰ってきた子供たちが、親のいる空間を通らず(親の顔を見ず)に個室に行けないような動線をなるべく考えるようにしています。マンションでは間取りの構造上無理でも、戸建住宅であれば、階段の向きを変えてでも実現するようにしています。親と口を利きたくないような時期はありますが、そんな時だからこそ、親は子供の事を心配してしまいますから…

 以上のように、子供部屋については色々な考え方があります。リフォームで子供必要になった時点で考え始めるのではなく、子どもが小さいうちから、親同士または子供も交えてどんな家族像考えているかをじっくり話をしておきたいものです。子供の成長に合せ、自由な発想でいろいろ工夫することで、子供にも親にも快適な、その家族らしい住居空間が出来上がってゆくと信じています。



小さな部屋に2段ベッドを入れて、思いっきり女の子らしくした子供部屋の事例。
こことは別に、ピアノを置いた遊びコーナーをリビングに用意している


5才と3才の姉妹の子供部屋。入り口扉が二つ用意されているので、将来のプチリフォームで分割が可能


写真2の姉妹の家には、1階に子供のプレイルームが。幼稚園のお道具やリビングで遊ぶ時のおもちゃはここに収納。少し広めの階段の踊り場には小さな子供図書館も


LDの中に作った子供コーナー。おもちゃ箱、絵本棚、傷がつかない床のマットなどで小さな隠れ家を演出した




建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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