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建築家リフォーム

2012年12月12日更新

多様な役割をもったダイニングの設計の仕方

 ご自宅で、家族が集まって団らんをする場所はどこでしょうか?通常考えるとリビングという答えが多そうですが、実際に色々なお宅にうかがって質問してみると、以外とダイニングテーブル周辺に集まっていることが多いようです。食事をする場所がダイニングテーブルで、そのままダイニングテーブルに座ったままの流れでテレビを見たり、お母さんがダイニングでコンピューター作業やアイロン掛けなどをするので、自然とその周りに子供たちが集まって宿題をしているというシーンが展開されているパターンのようです。

 実はこのような役割を持ったスペースがアメリカではファミリールームと呼ばれています。リビングが訪問客に対するもてなしの空間であるのに対し、ファミリールームは家族だけのくつろぎ空間となります。リビングルームには暖炉があり、絵画が飾られており、対外的に家の風格を示すシンボル的な空間と考えられます。ファミリールームにも暖炉があるケースもありますが、えてしてその場所にテレビが置かれ、家族の写真や子供の描いた絵が飾られ、家族で読みまわす新聞や雑誌などもこちらに置かれています。とにかくカジュアルなインテリアになっているのが特徴で、キッチンの隣にあったり、2階や地階に置かれる場合もあります。2階や地下の場合は、お湯を沸かしてお茶を飲める程度のミニキッチンが用意されていることもあります。

 実はアメリカの大きな住宅では、ファミリールームの他に、イートインキッチン(キッチンの中に小さな家族用のダイニングコーナーが用意された空間)もあるのですが、全てに「よそ行き」と「普段使い」のダブルの空間を用意するのは、土地の広さに制限がある日本では難しいでしょう。

 それでは、どうすべきかと考えると、日本のダイニングルームにアメリカのファミリールームの使える機能を付け加えてゆくことで、お母さんの作業効率もあがり、子どもも集まり、家族の会話が弾む空間へとして行くことができるのではないでしょうか。

 ダイニングテーブルの機能を中心に一日の家族の活動を見てゆくと、どうすべきかのヒントが隠されているようです。朝食を採りながらご主人が新聞を読んだ後の食卓は、お皿やカトラリーは片付けられて、奥さまのコンピューターテーブルへと変わります。ランチの時にはまた食卓に戻りますが、夕食までの間は書斎を兼ねながら洗濯物や繕いものといったパントリー機能を持ちます。夕方には子供たちがバラバラと集まっておやつを食べる際はスナックコーナーに、宿題をするときには勉強机の役割を果たします。夕食の続きで、ご主人の晩酌の場になったり、コンピューターや書き物の作業台になって、翌日中には片付けないといけないメモや書類が置かれた保管場所になって、一日の流れが終わるといったイメージでしょうか。

 整理すると、食卓であり、パントリー作業台であり、スナックコーナーかつ勉強机でもあり、書類の保管場所にもなるというのがダイニングテーブルの役割と言えます。勿論、各家庭によって違いはあると思いますが、ダイニングテーブルの周りに用意しておきたい機能も見えてきたのではないでしょうか。まず、役割を頻繁に変えるためには、机の上の調味料や書類を一時避難させるために、手近な位置にカウンターが必要になります。コンピューターや書き物や裁縫道具を常時机の上に出しておくこともできませんので、それらを片付けておく収納も必要になります。電話やプリンターといった機能も集まってくることになります。スナックコーナーという点では、冷蔵庫や電子レンジが近くにあるのも便利です。レシピ研究のための本棚も少しは欲しいところです。また、各作業の状況に応じて、照明も上手にコントロールしたいところです。ペンダントで食卓らしい演出をすると同時に、ダウンライトで全般的な明るさを確保したり、調光装置で明るさもコントロールしたくなります。

 以上のように、ダイニングというスペースには多様な用途が必要になります。この空間をどのように設計するかが、リフォーム・リノベーションを成功させる大きなカギであることは間違いなさそうです。



色々なものが上に置かれていても余裕があるように3メートルの長さで作られた特注のダイニングテーブル。右の収納が調味料やナプキンなどの食卓要素の避難場所となっている


コンピューターが置かれ書斎化しているダイニング。横のカウンターにはプリンターや電話機、ステレオが置かれている。カウンタ下の薄い棚が書類置き場になっている


アメリカのファミリールームの事例。カジュアルな雰囲気で座り心地優先のソファーやテレビが置かれ、リラックスした空間となっている


周囲にL字型のカウンター収納を廻したダイニングスペース。普段は左側のカウンター上には手紙類が保管され、正面の収納の内部に文房具や書類がしまわれている




建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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