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建築家リフォーム

2015年07月23日更新

インテリアパース(リフォーム完成予想図)の効用

住宅設計の建築家やリフォーム会社といった、いわゆる同業者から「お施主さまに対して、どのように完成予想イメージを提示していますか?」という質問を良く受けます。かつて、戸建て住宅を設計したいた頃は、白い模型を作って形のイメージを判って貰うようにしていましたが、リフォームそれもマンションリフォームに業務を絞ってからは、あまり模型の効用を感じておりません。かといって、CGでリアルな完成予想パースを作ることも、ほとんどありません。一般のリフォーム会社では、完成時のイメージが判るコンピューターグラフィックス(CG)で描いたパースがお施主さまにアピールするには最も効果的だと聞いています。

それでは、なぜ僕らが完成予想パースを作らないかというと、大きく三つ理由があります。一つは、僕らが時間を掛けてお施主さまと打ち合わせを積み重ねてゆくことでデザインを決定してゆくスタイルの設計をしているので、施主側で一番完成イメージ図が欲しい最初の設計依頼をすべきかどうかの段階では全く決まっていないことが一つです。次に僕らのデザインがマンションリフォームで、戸建て住宅のような吹き抜けや階段などの3次元的要素が少ないので、立体的な予想図がなくても想像がつきやすいからです。3つ目はデザインの内容が、素材の力や細かいディテールに大きく傾いているので、自然素材の大理石や天然木の突板などがCGでは再現しにくく、また細かいディテールもCGでは表現できないことで、説得力のあるプレゼンテーションとならないからです。

その代りに僕らがお施主さまに提示しているのが手書きのスケッチパースや三次元的に表現した立体図などです。CGは完全に設計内容(内装素材や色味・艶まで)が決まっていれば、プロのCG屋さんにお願いして3~5日ほどで完成してきますが、実際にはデザインが決まり切っていなかったか所については、そこから幾度かパース屋さんに微調整して貰うので、正味10日ほど掛かってしまいます。それに対して、早い手描きスケッチパースであれば10~20分、色味を付けたりしても30分ほどで完成するので、手軽でやり直しも容易です。正確な形が必要であれば、事務所内でも作れる3次元ソフトを使って下図を書いて、そこに色味を付けるスタイルであれば、3~4時間程度で作ることが可能です。外注に出してしまうと、その最中にデザインを手直ししても、下図が出来上がってからまた修正依頼と時間の無駄が膨らんでゆくのに対し、手許にパースを置いたままでデザイン変更する場合はすぐに修正ができ、自分の目で確認しながら変更できるので、設計プロセスを途切れさせないというメリットもあります。スケッチだけだと説得力が足りない場合は、横にこれまで設計してきた事例で似た空間の写真を載せたり、素材の写真イメージを添えることで、イメージを膨らませやすくなります。

精密な完成予想パースを作ると、それが早い時点でお施主さまの脳裏に残って、その通りに作ることが設計・施工側の目的になってしまうという笑い話のようなこともあるようです。僕らは現場が動いている段階でも、少しでも空間を良くするために工夫を加えてゆくよう努力しているつもりです。CGを発注した時点で設計が止まってしまう完成度の高いCGのプレゼンパースより、最後までデザインの手を留めず、絶えず微調整してゆける素朴ではありますが想像力を膨らませる余地があるスケッチ的なパースの世界の方があっているのだと思っています(とはいえ、お施主さまよりの強いご要望があれば、有料となってしまいますがCGのパースも作っておりますが…)。



打合せ最中に、10分ほどでサッと描いたキッチンの立体図。人の姿も描き込むことで、 スケール感や二次元の図面では伝わりにくい使い勝手や動線のシミュレーションに役立つと 喜んで貰えた


平面と展開情報からCADで立体化した透視図を、さらに手描きでなぞって色付けした説明図。 コンピューターで起こすと、バランス的には正確だがどうも硬いニュアンスのパースになる傾向がある


手描きのスケッチパースにこれまでの設計事例の類似空間写真を添付したイメージ図。




マンションを購入するかどうかをまだ検討中の施主用に考えて作った、 より簡単なラフスケッチ図。その空間が持っているポテンシャル(潜在力)を示したイメージ




手描きで作ったプレゼンテーション用の平面案と立体透視図。 平面図と立体図を同時に考えながら作っているので、同じレベルの仕上がり感になっている



始めてプロのパース屋さんに外注で作ってもらった、完成度の高い完成予想図。 設計がほぼ終わった段階で最終的な色味などの調整の為に作成






建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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