2015年10月07日更新
樹木の剪定作業と、その季節。
樹木には、それぞれの品種ごとに剪定・刈込(枝を切ること・刈ること)に適した時期があります。
例えば、「この木は、ここに植えられて何年も経つのに、花が咲いたのを一度も見たことがない」というようなことはありませんか?その原因は、もしかしたら、次の年の花芽が形成された後に剪定作業を行ってしまい、枝と一緒に花芽も切り落としてしまっているからかもしれません。マンションの植栽でよく使われているサツキという低木があります。これは、8月頃には花芽が形成されます。ですから、花が終わってから花芽が形成される前の、6月~7月頃に刈込作業を行うのが一般的です。
そもそも、剪定には、樹木の形を美しく保つという美観上の目的の他に、混みあっている枝葉を間引き、通風・採光を良くして病害虫を防ぎ、風雪害に対する抵抗力を強める、生長や枝数をコントロールして花付きを良くするなどの目的があります。樹木は、適期以外に大幅な剪定を行ってしまうと、樹勢が弱まり、時には枯死してしまうこともあるので、適切な時期に剪定を行うということは、大切なことなのです。代表的な樹種の剪定適期は、下記のとおりです。
針葉樹 | :10~11月もしくは3~4月 |
常緑樹 | :春の新芽が伸び生長が休止する5~6月頃 |
:土用芽が伸びて再び生長が休止する9~10月頃 | |
落葉樹 | :落葉している期間である11~3月頃 |
:新芽が出そろって葉が固まった7~8月頃 |
上記の条件にプラスして、花木の場合は花芽の形成時期も関わってくるのでさらに細かく配慮が必要になってきます。
アベリア・ハギ・ムクゲ等 | :秋~翌年春頃 |
アジサイ・ツバキ・ツツジ類等 | :5月中旬~9月頃の花の終わった直後 |
例えば、年に1回だけ緑地管理の作業を行うという場合、「お正月前にきれいにしておきたい」という理由から、12月に作業が行われる場合が多いですね。12月は、落葉樹に対しては剪定に適した時期ですが、それ以外の樹種に関しては、実は、そうでないのです。また、花芽ができているにもかかわらず、枝を切ってしまって、来年の花が咲かなくなってしまうケースや、もしくは、「花芽ができているので、剪定するのを止めておきましょう」ということで、その木を切らないうちに何年も経ってしまって、大きくなりすぎてしまっているケースなどが見受けられます。
しかし、上記の適期を参考に、単純に年間管理計画を作成していくと、3月に針葉樹の剪定をし、5月に常緑樹の剪定を行い、6月にサツキの刈込をし・・・という感じで、毎月、何かしらの作業を行うことになってしまいます。そうすると、コストが増えてしまう原因になってしまいます。もちろん、必要な部分にはコストを掛けていく必要はあるのですが、むやみに作業量を増やしても意味はないですよね?
そこで、6月に常緑樹の剪定とサツキの刈込を一緒に行い、1月に落葉樹の剪定と花木の施肥などをまとめて行うなど、一緒にできる作業をなるべくまとめて行うようにしていくといった工夫をして、「適切な作業を、適切な予算で」行うようにしていきます。このような作業の組み合わせや、作業提案を行い、今ある植物を、より健康に、さらに美しく仕立てていくのが、私たち、造園のプロの仕事だと思っています。
コブシは、落葉樹なので、冬が剪定の適期なのですが、冬の時点ですでに花芽ができてしまっています。6月頃には花芽が形成されるので、花が終わった直後頃に剪定しておく必要があります。
- 株式会社Q-GARDEN代表取締役
小島 理恵 町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー 講師
横浜生まれ。信州大学農学部森林科学科卒。「ガーデンづくりを通じて、地域の景観・環境の向上に貢献する。」をポリシーに、その環境に合った植栽プラン、植栽内容に合った土づくりにこだわり、ガーデンの「デザイン」→「施工」→「年間管理」を行っている。植栽に関する知識や経験の豊富さなどから、ミュージアムなど大規模なガーデンの年間管理の依頼や、コンサルティングなどの依頼もある。2014年4月『はじめてでもカンタン! おいしいベランダ野菜』を出版。