2015年12月08日更新
落ち葉は「集めて処分した方が良い」?
かつては、落葉の季節になると、落ち葉を集めてはたき火をするのが、季節の風物詩となっていました。最近の都心では、めったに見かけることのできない情景となってしまいましたね。たまに、地方をドライブしていると、たき火のにおいが漂ってくることがあって、「ああ、懐かしいなあ・・・焼き芋したいな」と思ったりすることはありませんか?
さて、庭の手入れをしていて、落ち葉を集めていると、「落ち葉は肥料になるから、残しておいた方が良いのではないですか?」と、聞かれることがよくあります。かつては、上記のように集めて燃やしてしまうのが、どこの家庭でも普通のことだったのに・・・
皆さんは、落ち葉は「集めて処分した方が良い」それとも、「そのまま置いておいた方が良い」どちらが良いと思われますか?
自然の森林では、落ち葉は発酵し、微生物などに分解されて、腐葉土やたい肥となり、植物に養分などを補給したり水や空気を適度に保持したり、微生物の住処になったりと、様々な役目を果たしてくれています。このような知識が皆さんにもあるので、「落ち葉はそのまま取っておけば、土にとってとても良いものになる」と考えられるのですね。それはそれで正解です。
ところが、落ち葉には、このよう良い面もある反面、植物にとって良くない面もあるのです。例えば、土の表面を落ち葉が覆ってくれていることで、害虫の隠れ家になったり、適度な温度が保たれることで、害虫が越冬できるようになったりしてしまいます。また、病気の葉が落ちたものをそのままにしておくと、そのウィルスが雨水によって、他の区域まで流れ出してしまったり、水はねで、その病気が他の植物にうつって行ってしまうというケースも考えられます。
自然の林では、長い時間をかけて、植物だけでなく、微生物から昆虫、鳥などの動物に至るまで、様々な生き物の生態系のバランスが取れています。ですので、害虫が発生すれば、肉食の動物がそれを食べてくれたり、病原菌を善玉菌がやっつけてくれたりというシステムが出来上がっているのです。
一方、人工的に作られた庭では、そのようなシステムが未熟です。ですから、人間が、なるべく病気や害虫の被害を受けないようにと気を使ってあげなければいけません。落ち葉を集めて燃やすという行為は、害虫や病気の原因となる菌を翌年の春まで持ち越さず、殺してしまうという効果があり、昔から、そのことをきちんとわかったうえで、落ち葉を集めて燃やしていたのですね。
また、燃やしたあとの草木灰には、リン酸・ケイ酸・カリウムなどの成分があり、これは、花を咲かせたり、根や茎を育てたりするための栄養素となります。昔話では、花咲かじいさんが「枯れ木に花を咲かせましょう~」といって、灰を撒いていましたが、これにも、きちんと理由があったのですね。
では、現代の人工的な庭の中で、腐葉土やたい肥がたっぷりのフカフカの土にしたい場合はどのようにすれば良いのでしょうか?毎年、落葉を掃いて処分してしまうと、「土がどんどんやせて行ってしまうのではないか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
一番手軽な方法は、たい肥を購入してくること。その際、「完熟」とか「熱処理済み」などと書かれた、完全に醗酵したものを選んでください。熱で処理されることによって、先に述べた害虫の卵や病原菌なども死滅していますので、安心して使用できます。このたい肥を「マルチング」といって、土の表面に敷きならすようにします。これを毎冬続けていくことで、有機質が豊富なフカフカの土に、徐々に改善していきます。
さらに、極めつけの方法としては、敷地内に「たい肥熟成場所」をつくり、そこに落ち葉を集めてたい肥をつくるという方法があります。この場合、切り返しなど、管理に手間がかかるのですが、究極の場内循環となり、もっとも環境にやさしい方法となります。
さて、今年の落葉は、どう処理しますか?
かつては、どこの家でも行われていた「落葉焚き」には、ちゃんと意味があったのです。
- 株式会社Q-GARDEN代表取締役
小島 理恵 町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー 講師
横浜生まれ。信州大学農学部森林科学科卒。「ガーデンづくりを通じて、地域の景観・環境の向上に貢献する。」をポリシーに、その環境に合った植栽プラン、植栽内容に合った土づくりにこだわり、ガーデンの「デザイン」→「施工」→「年間管理」を行っている。植栽に関する知識や経験の豊富さなどから、ミュージアムなど大規模なガーデンの年間管理の依頼や、コンサルティングなどの依頼もある。2014年4月『はじめてでもカンタン! おいしいベランダ野菜』を出版。