1棟リノベーションの魅力を検証
ここ数年、注目度の高いリノベーションマンション。単なるブームと捉える人はさすがにもういないでしょう。中古住宅を一旦、スケルトンの状態に戻してから、自分の好みの空間に作り替える。カスタマイズ性のみならず、経済的な合理性も魅力のひとつのよう。お仕着せではない、認めた価値の分だけを対価として支払う。そんな意識が顧客のなかにあるような気がします。
リノベーションマンションを買う場合、そのプロセスはいくつかのバリエーションに分かれます。不動産会社が中古マンションを買い取って、個性的な内装工事を仕上げてから再販するケース。次に、まず顧客が中古マンションを買ってから、建築家やリフォーム会社とリノベを進めていくケース。変わったところでは、希望の叶ったマンションを不動産会社が買い取ってくれ、自分の好みの内装をやり終えてから購入するといった流れもあります。それぞれ一長一短ですが、手元資金の多少、希望条件、こだわりの度合いなどによって相性の良さが変わるでしょう。
そして、同じリノベーションでも、まったく異なる商品性を有したものが「1棟丸ごとリノベーション」。一体何が違うのでしょうか。
1棟丸ごとリノベーションとは、文字通り建物すべてをリノベーションして分譲するケースをいいます。想像に難くないと思いますが、専有部だけでなく、共用部も更新、改装する点が1棟リノベーションの大きなメリットです。マンションの資産性は、おもに立地が重要視されますが、その次に大事な要素が、共用部のグレードや品質。外観の雰囲気やエントランス(オートロック)の装備、目に見えない構造や電気・給排水設備も大部分が共用部にあたります。「室内(専有部)がいくら刷新されたからといって、外観の冴えない古い建物に友達は呼びにくいかも」、「老朽化した設備のままでは安心して暮らせない」。そんな不安がよぎる人は、1棟リノベーションに絞って探すのが賢明といっても過言ではないだろう。
右の画像は、築25年前後の賃貸マンションをリノベーション分譲中の「リヴィラ等々力」(京阪電鉄不動産他)。賃借人が退去した部屋から順に内装工事を行い販売しています。共用部のリフォームとしては、植裁スペースの設置や外壁塗装(一部)、オートロックも新しく設置し、階段の踊り場部分には緑のカーテンが目隠しになるよう工夫されています。目に見えないところでは、給水設備(受水槽の撤去など)の刷新など。共用部は〆て8,000万円程度のコストを投下しています。
一般的に分譲マンションの共用部は個人ひとりの一存で工事をすることはできません。中古だからこそ、気になるところを事前に解消してもらえた、そう思える人にとって、1棟丸ごとリノベーションの「共用リフォーム」は大きなメリットといえるでしょう。
「リヴィラ等々力」(1986年竣工)は、分譲価格が坪単価にして@228万円。周辺相場の新築マンション(@300万円程度)と比べると、ファミリータイプで1,500万円~2,000万円も買い求めやすい計算になります。「これなら住み慣れた土地でマイホームが持てる」と地元の若い世帯から評価されているのだとか。
リノベーションマンションの注意点をあえて挙げるとすれば、性能を事前にしっかり理解しておくこと。この10年、住宅設備や建築技術は飛躍的に向上しました。省エネ性や居住性の違いを知った上で、納得して決断されることをお薦めします。
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